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CureVac (Tübingen、 Germany) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第154回)ー

  • 2020年3月1日
  • 読了時間: 5分

mRNAを使った独自技術RNActive® テクノロジーで、がん・希少疾患・ワクチンの治療薬開発を行っているバイオベンチャー。迅速にmRNAを少量製造できるRNA Printer®という技術で、アウトブレイクや個別化医療にも対応。



ホームページ:https://www.curevac.com/



背景とテクノロジー:

・核酸を用いた創薬―核酸医薬品は、近年技術開発が進み承認される薬が出てきて注目されている。例えば、SMN1遺伝子変異によって起こる脊髄筋委縮症の治療のための核酸医薬品ヌシネルセン(Spinraza)は、SMN2遺伝子のエクソン7のエクソンスキップを阻害する核酸医薬品(アンチセンスオリゴヌクレオチド)である。通常はSMN2のエクソン7はスキップされて不完全長のSMN2ができ、不安定なために機能しないが、ヌシネルセンによってエクソン7を含むmRNAとして転写、翻訳されることで、安定な完全長のSMN2が発現される。この完全長のSMN2発現がSMN1の機能を代替するために治療効果が得られる(SMN1とSMN2はアミノ酸配列は同じたんぱく質)。Ionis PharmaceuticalsとBiogenによって開発され、2016年にFDAが承認した。


Alnylam Pharmaceuticalsは、家族性アミロイドポリニューロパチーという遺伝性疾患において蓄積するトランスサイレチンの蓄積をsiRNAによって抑制する核酸医薬品パチシラン(Onpattro)を開発し、2018年にFDAが承認した。


・アンチセンスオリゴヌクレオチドやsiRNAは、内在性の核酸(DNA/RNA)に結合してその機能を阻害することで機能を発揮しているが、阻害方向だけでなく活性化方向の治療薬開発も行われている。MiNA Therapeuticsは、遺伝子の発現を上昇させることができるsmall activating RNA (saRNA)という独自技術を用いた治療の実用化を目指している。


・mRNAを用いた創薬も活性化方向(たんぱく質を作る方向)の創薬である。BioNTechは、リポソームに内包させたmRNAによってがん抗原やネオアンチゲンを発現させる、がんワクチン療法などを開発している。


Moderna Therapeuticsも、mRNAのウラシルをN1-methyl-pseudouridineに改変することで通常mRNAが持つ免疫原性を減少させ、安定性を高めたmRNA核酸医薬品を用いて、ネオアンチゲン療法の開発を行っている。


・今回紹介するCureVacも、独自技術であるRNActive® テクノロジーを用いたmRNA創薬を行っている。CureVacは天然のmRNAを徹底的に解析することで、化学修飾することなくmRNAの安定性を上げられる技術RNAoptimizer®を開発している。これはmRNAの5’非翻訳領域、翻訳領域、3’非翻訳領域の配列をカスタマイズし、最適な量のたんぱく質を発現させられる技術である。


・CureVacは、標準化されたGMPグレードの高品質mRNA薬製造技術を持つ。mRNA創薬・製造に関する特許数は700を超え、さらに500以上の承認待ち特許がある。この大規模製造施設だけでなく、2週間で1グラム以上のmRNAを作ることが出来るポータブルなmRNAプリント設備RNA Printer®を開発している。これによりアウトブレイク時の迅速な対応や、病院における個別化医療に対応することが可能。



パイプライン:

CV8102

TLR7/8/RIG-1アゴニストであるノンコーディング一本鎖RNA(TLR7/8/RIG-1はRNAを認識する受容体)。腫瘍内投与によりがん微小環境を調節するとともに全身の免疫反応を誘導することで、投与部位および投与部位以外のがんに対しても作用することが期待される。単剤および抗PD-1抗体との併用療法として開発中。

開発中の適応症

・Phase I

メラノーマ、皮膚有棘細胞がん、頭頚部扁平上皮がん、腺様嚢胞がんhttps://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03291002


CV9202 (BI1361849)

非小細胞肺がんで共通に発現する6つの抗原をターゲットにしたmRNAワクチン。自己アジュバント活性を持つ。1種か2種の免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1抗体デュルバルマブ、抗CTLA-4抗体トレメリムマブ)への補充ワクチン療法として開発中。ベーリンガーインゲルハイムと共同開発。

開発中の適応症

・Phase I

非小細胞肺がん


Cas9ゲノム編集(肝臓を標的とした)

CRISPR Therapeuticsと共同で、新規Cas9 mRNAコンストラクトを開発中。Cas9効力の増強、発現期間の短縮、免疫原性の減少の改善を目的としている(in vivoゲノム編集は、Cas9たんぱく質がゲノム編集のタイミングだけで発現している方がよく、長期発現はオフターゲット効果などのリスクを生む、Cas9たんぱく質が微生物由来のため免疫反応を惹起するリスクが上がる等の課題がある)。


CV7202

狂犬病ウイルスの糖タンパク質RABV-Gをコードする予防的mRNAワクチンを封入した次世代脂質ナノ粒子(LNP)

開発中の適応症

・Phase I

狂犬病


CV7301

インフルエンザの予防的mRNAワクチンを封入した次世代LNP

開発中の適応症

・前臨床研究段階

インフルエンザ


種々のプロジェクト

ビル&メリンダゲイツ財団のサポートのもと、マラリアワクチン、万能インフルエンザワクチンのmRNAワクチンなどを開発している



最近のニュース:

さまざまながん種に対するネオアンチゲンワクチン5つまでを共同で開発する契約をEli Lillyと締結


CV9202の全世界における共同開発販売契約を Boehringer Ingelheimと締結


肝臓を対象としたin vivoゲノム編集のためのCas9 mRNAの共同研究契約をCRISPR TherapeuticsおよびCasebia Therapeuticsと締結。Casebia Therapeuticsは、特定領域におけるCRISPRベースの治療法開発のためにCRISPR Therapeuticsとバイエルが共同で創業したジョイントベンチャー。


mRNAベースの抗体医薬品を創製するための共同研究契約とライセンス契約をGenmabと締結


Arcturus Therapeuticsの持つ脂質介在型核酸デリバリー技術とCureVacのmRNA創薬技術を組み合わせることで、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(血中にアンモニアが蓄積する遺伝性疾患)などの希少疾患に対する治療薬の共同研究契約を締結



コメント:

・mRNAによる遺伝子発現は基本的に一過的で短期的であり、長期で発現させようとすると連続投与が必要になる。1回投与で効果を持つがんワクチンや予防ワクチンの開発が進むのはそれが理由。CRISPR TherapeuticsのCas9発現の共同研究も、Cas9の発現を一過的にしたいため。ウイルスベクターなどは基本的に長期発現になるので、適材適所で棲み分けが可能。


・LNPなどのDDS技術を使う場合、LNPの臓器指向性のため肝臓など標的臓器が限られてしまうのが課題。


・少量製造可能なポータブルmRNAプリント設備RNA Printer®がアウトブレイクに対応可能とあるように、新型コロナウイルスCOVID-19に対するワクチン開発をスタートさせている(参考)。



キーワード:

・核酸医薬品

・mRNA

・がんワクチン

・感染症

・mRNA少量製造プリンター



免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

 
 
 

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