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Moderna Therapeutics (Cambridge, MA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第32回)ー

更新日:2019年12月13日


高い安定性と低い免疫原性というプロファイルを持つ改変メッセンジャーRNA(mRNA)を使った治療薬やワクチンを開発し注目を浴びるバイオベンチャー。AstraZenecaやMerck、アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)と複数の開発品を共同臨床開発する核酸医薬の台風の目。

ホームページ:https://www.modernatx.com/

パイプライン:

mRNA-4157

患者さん一人ひとりのがん組織から採った生検サンプルをシークエンスし、見つけたがん細胞特異的変異タンパク質(ネオアンチゲン)を見つけ出し、ネオアンチゲンを改変mRNAの形で患者さんに投与することで、標的部位においてネオアンチゲンの発現を上昇させ、免疫細胞がネオアンチゲンを発現するがん細胞を殺すことを促すがんワクチン療法。メルクとの共同開発。

開発中の適応症

・Phase 1

固形ガン(単独療法およびキイトルーダとの併用療法)

mRNA-2416

OX40(CD134)のリガンドで、T細胞を活性化させる作用があるOX40L(CD252)をコードするmRNA。腫瘍内局所投与することでT細胞を活性化させ、T細胞による抗腫瘍効果を増強する。転移性がんにおけるアブスコパル効果(放射線で照射外の腫瘍が退縮する現象)を持つ可能性があることが期待される。

開発中の適応症

・Phase 1

悪性/転移性の固形ガンもしくはリンパ腫

mRNA-1388

チクングニアウイルスの構造タンパク質をコードするmRNAを用いた予防ワクチン。アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)の補助金を得ている。

開発中の適応症

・Phase 1

mRNA-1325

ジカウイルスの抗原タンパク質をコードするmRNAを用いた予防ワクチン。米国生物医学先端研究開発局(BARDA)とアメリカ国防高等研究計画局(DARPA)の補助金を得ている。

開発中の適応症

・Phase 1 / 2

mRNA-1647

サイトメガロウイルスの6種の抗原タンパク質をコードするmRNAを用いた予防ワクチン。

開発中の適応症

・Phase 1

AZD-8601

vascular endothelial growth factor-A (VEGF-A)タンパク質をコードするmRNA。血管新生を促進する。AstraZenecaとの共同開発。

開発中の適応症

・Phase 2

心不全

最近のニュース:

Moderna Therapeuticsの全容。

コメント:

・通常のmRNAを外部から体内に投与するとTLRなどの自然免疫によって排除されてしまう。またRNA分解酵素であるRNaseは環境中に大量に存在し、mRNAは簡単に分解されてしまう。Moderna社ではmRNAのウラシルをN1-methyl-pseudouridineに改変することで通常mRNAが持つ免疫原性を減少させ、安定性を高めた(参考)。

・mRNA投与による治療はDNAのように細胞核まで到達する必要がなく、細胞質に入れば翻訳される。またゲノムに組み込まれるリスクも少なく、永続的に発現し続ける可能性も少ない。

・siRNAやアンチセンスオリゴヌクレオチド、miRNAと異なり、標的タンパク質の発現を上げることができるため、これまでと異なるアプローチの治療薬を作ることができる。

キーワード:

・核酸医薬品

・mRNA

・がん免疫

・感染症

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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