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C4 Therapeutics (Watertown, MA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第147回)ー

更新日:2020年1月12日


たんぱく質分解誘導薬(e.g. PROTAC, SNIPER)の創製を目指すダナ・ファーバーがん研究所からのスピンアウトベンチャー



ホームページ:https://c4therapeutics.com/



背景とテクノロジー:

・2014年、サリドマイドの類縁体であるレナリドマイドがE3ユビキチンリガーゼ複合体の構成要素であるCereblonを介して転写因子IKZF1およびIKZF3のユビキチン化とプロテアソームによる分解を亢進し,抗腫瘍効果を発揮することが明らかにされた(論文1論文2)。この前後から、たんぱく質を分解誘導する低分子化合物について数多くの報告がなされ注目を浴びている。


・たんぱく質分解誘導薬は以下の3つのパーツが組み合わされた低分子化合物である。標的たんぱく質とE3ユビキチンリガーゼを近接させることにより、標的たんぱく質のユビキチン化を誘導し、プロテオソームによる標的たんぱく質の選択的分解を引き起こす。

標的結合パーツ

標的たんぱく質と結合するパーツ。従来の低分子化合物のように活性中心に結合する必要がなく、標的たんぱく質のどこかに結合できれば良い

リンカーパーツ

リンカーはさまざまなものが可能だが、標的結合パーツやE3リクルートリガンドパーツのどの部分にリンカーをつなぐか、そしてリンカーの長さをどの程度にするかは現状は実験による検証が必要

E3リクルートリガンドパーツ

E3ユビキチンリガーゼと結合し活性化するパーツ。分解誘導薬として最も有効なE3リガーゼとしてはCereblon、cIAP、VHL(Von Hippel Lindau)が現状知られているが、ベストなE3リガーゼはどれかは実験による検証が必要


・タンパク質分解誘導薬の詳細についてはPfizerのSenior Scientist、masayaさんのブログがおすすめ(こちら)。

・今回紹介するC4 Therapeuticsは、このたんぱく質分解誘導薬の創製を目指しているバイオベンチャーである。以下の技術を組み合わせた独自プラットフォームDaedalus®を使ってたんぱく質分解誘導薬を探索している。

①化合物合成

構造生物学的アプローチ、コンピューターモデル、蓄積した知見を用いた化合物デザイン

②機能評価

定量的アッセイ法、メカニズムの洞察、コンピューターモデルを用いた機能評価

③活性評価

分解の定量、分解の持続時間、触媒効果の活性評価

ーこれら①〜③を組み合わせてドラッグデザインを行っている。


・同様のたんぱく質分解誘導薬開発で先行している会社としてArvinasがある。アンドロゲン受容体の分解を誘導するARV-110で、前立腺がんを適応とした治験をすでにスタートさせている(参考)。



パイプライン(未開示):



最近のニュース:

2016年に締結したRocheとのたんぱく質分解誘導がん治療薬のコラボレーション契約を転換することを発表


アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経疾患に関するたんぱく質分解誘導薬のコラボレーションをBiogenと締結


Googleの子会社Calicoとがんおよびその他疾患治療のためのたんぱく質分解誘導薬のコラボレーションを締結



コメント:

・たんぱく質分解誘導薬のバイオベンチャーとしてはArvinasKymera Therapeuticsなどがある。こちらのバイオベンチャー紹介でもたんぱく質分解誘導薬について解説しているので参考に。


・C4 Therapeuticsはまだパイプラインを公開していないが、ダナ・ファーバーがん研究所からのスピンアウトで生まれたバイオベンチャーであり、がん治療薬の創製を中心に行っていると考えられる。


・たんぱく質分解誘導薬の探索にはE3ユビキチンリガーゼの活性、リンカーの調節、たんぱく質分解アッセイ系の構築、化合物の細胞透過性など実験から得られるノウハウの蓄積が重要であり、先行している会社に一日の長がありそう。



キーワード:

・たんぱく質分解誘導薬

・低分子化合物

・がん



免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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