2017年米国臨床腫瘍学会(ASCO2017)で今年の主要トピックの一つはCAR-T療法だったそうです。CAR-T療法とは、
元々体の中に存在するリンパ球の一種であるT細胞を体外に取り出し、がん細胞を見つけて、攻撃する働きをさせるCAR(キメラ抗原受容体)をT細胞に発現させて、再び体の中に戻すことで抗腫瘍効果を発揮させる免疫療法(出典および詳細はこちら)
です。要は細胞治療の一つです。この出典に書いてありますが、その特長は高い奏効率。多発性骨髄腫での成績は19人中14人が完全奏効だそうです。あの免疫チェックポイント阻害剤オプジーボでも2−3割しか効かないのにこの数字は驚異的です。もちろん例数が少なすぎるので単純比較はできません。それを差し引いても驚きの数字です。白血病に対するCAR-T療法でも良い結果が出ているそうです。
細胞治療では他にもAsterias Biotherapeutics社がES細胞から分化させたオリゴデンドロサイト前駆細胞投与による脊髄損傷治療で非常に良い成果を上げているそうです(英語ですが詳しくはこちら)。
あと有名なのはwet型加齢黄斑変性症へのiPS細胞由来網膜色素上皮細胞の自家移植臨床研究(こちら)。経過は順調だそうですが、自家移植だと一人数億円かかるみたいで、実用化は考えていないだろうと思います。他家移植での臨床研究も進めているみたいですが、それでも高額になりそうです。おそらくiPSの価値を測る研究としての意味合いが強そうです。
このように細胞治療での良好な臨床試験結果が出始めてきています。非常に期待がもてて素晴らしいですね。細胞治療の時代到来です。ただ上市された場合の費用はいくらなのかが気になるところです。あまりにも手がこんだ治療法は、おそらく実用化ではなく、Proof of Conceptの意味合いが強いでしょうね。じゃあ細胞治療で良好な結果が出たらどうするか?ここからが企業の腕の見せ所だと思います。移植された細胞のどんな効果が良好な結果に寄与したのかを解析し、薬やデバイスなど違うアプローチで同じ効果を生み出し、実用的なコストに落とし込んでいくことが求められるのでは?と思います。そこが次の壁になりそうかな。でも非常に面白そうですね。
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