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研究力で勝負する会社、開発力で勝負する会社


経済財政諮問会議で薬価に関する議論が行われました。その詳細についてはこちら。要するに日本はこれ以上医薬品にお金は払えないから、ジェネリック医薬品を8割にし、新薬は画期的なものしか高い薬価をつけないっていう方針です。何をもって画期的とするかは難しいところですが、まあそれはさておき、医療費負担のお財布が厳しいのは医薬品巨大市場の日米欧どこの国も同じで、基本的には世界中でこんな流れでしょう。

日本の製薬会社は昔は、一度新薬を出せれば特許が切れた薬でもジェネリック医薬品にはあまり切り替えられず、長い間その薬で儲けられる会社ばかりで、みんな安定経営でした。しかし、ジェネリック医薬品8割を目指すことになった現在、そのビジネスモデルを転換する必要性に迫られています。そんな日本の製薬会社の近況を分析したのがこちらです。国内だけで薬を売っていればよかった時代が終わったため、各社ともグローバル市場への進出を急いでいます。

もちろん日本の大手製薬4社(武田薬品、アステラス製薬、第一三共、エーザイ)は、すでに随分前からグローバル体制化を進めていました。そして、グローバルに売れる薬作りに取り組んできました。その結果、グローバルに売れる製品がそれなりにあるのが現状だと思います。一方で、塩野義製薬はテビケイ、トリーメクというHIV治療薬を導出、田辺三菱製薬はジレニアという多発性硬化症治療薬を同じく導出し、どちらもロイヤリティ収入を得ています。

で、上記の記事のなかでも日本の製薬会社はグローバルに進出して薬を売り出してるって感じで書かれてますが、確かにそうなんですが、内情はそんなに単純ではありません。よく見ると武田薬品のエンティビオ、アステラス製薬のイクスタンジはどちらも他社が生み出した化合物を導入もしくは会社を買収した形での製品です。塩野義や田辺三菱は自社創製品ですが、自社でグローバル臨床開発できず導出してロイヤリティ収入を得ています。

このブログのタイトルにもある通り、これからは開発候補品を買収もしくは導入し、グローバル開発する「開発力で勝負する会社」と、さまざまな疾患の開発候補品を作り、導出して他社にグローバル開発してもらい、ロイヤリティ収入で儲ける「研究力で勝負する会社」に2極化していくのかなと思います。

おそらく国内大手4社は自社創製、自社グローバル開発を目指していますが、なかなか自社創製が出来ず苦戦しています。疾患領域を絞ることは臨床開発という視点では正しいのですが、研究という視点から見ると必ずしも正しい選択とは言えないと思います。というのも限られた領域内で研究成果を出すのは簡単ではないからです。研究というのは思わぬところで発見があり、それが薬となっていくもので、1つブロックバスター糖尿病薬が作れたら次のブロックバスター糖尿病薬も簡単に作れるという訳ではないからです。ということで、疾患領域を狭く絞っている会社は自社創製が出にくくなり、必然的に開発力で勝負していくしかないのではないかなと思います。かといって疾患領域を広く取ると研究所サイドからは薬が作りやすくなりますが、グローバルな開発体制を整えるのは難しくなります(そんなお金はない)。やはり相当な体力のある海外大手以外は、研究力で勝負する会社は基本導出してロイヤリティ収入で儲けるしかないのではないかなと思います。臨床開発の方がお金がかかることもあって、売上の多くは開発した会社が持っていくのが普通ですので、ロイヤリティ収入戦略は旨味が少ないのは確かですが。

開発力で勝負する会社か、研究力で勝負する会社か、どちらが良いのかは分かりませんが、世界トップ5クラスの製薬会社以外は、どちらかを選ぶのが正しい選択でしょうね。どっちつかずは身を滅ぼすことになりかねないと思います。そうしたそうな国内製薬がいっぱいあり、大丈夫かな?と思いますがw。

参考になれば幸いです。ご質問ご意見はお気軽にkenyoshida36@gmail.comまで。

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