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Cedilla Therapeutics (Cambridge, MA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第118回)ー


創薬標的たんぱく質の生体内における品質管理メカニズムを明らかにし、それを制御する低分子化合物で新規がん治療薬の創製を目指すバイオベンチャー

ホームページ:https://www.cedillatx.com/

背景とテクノロジー:

・これまでの低分子創薬の多くは、酵素(キナーゼなど)、受容体(GPCRなど)、チャネル(Naチャネルなど)、トランスポーター(セロトニントランスポーターなど)などを薬のターゲットとしてきた。

・近年、たんぱく質分解誘導薬というコンセプトが生まれた。これは生体内のたんぱく質分解の過程であるユビキチン化を意図的に誘導する薬で、分解させたい標的たんぱく質を認識する低分子と、ユビキチン化を誘導するたんぱく質ユビキチンリガーゼと結合する低分子をリンカーでつないで一つの分子とした薬である。標的たんぱく質とユビキチンリカーぜを出会わせることで、標的たんぱく質をユビキチン化させ、分解を誘導する。このたんぱく質分解薬の創薬で世界をリードしているバイオベンチャーがArvinasである。

・たんぱく質分解誘導薬は今非常に注目を浴びており、上記のArvinas以外にもC4 TherapeuticsやKymera Therapeutics、メガファーマも取り組んでいるが、2つの分子(標的たんぱく質とE3ユビキチンリカーぜ)両方を認識する必要があるため、化合物が大きくなりがちという課題がある。一般的に、化合物の分子量が大きいと消化管からの吸収が下がったり、体内分布に偏りが生じる。

・標的たんぱく質分解を誘導する方法として、上記の方法と異なったアプローチをとっているのがCedilla Therapeuticsである。生体内において、たんぱく質は使われた後や構造異常が起こったりすると、通常の過程として分解される。Cedillaが目指している創薬は、標的たんぱく質に対して、この通常過程としての分解を促進するというアプローチである。以下の4つのストラテジーがある。

①直接的なリガンド結合による分解誘導

標的たんぱく質に結合する低分子化合物で標的たんぱく質の構造(折りたたみ)を変化させることで、構造異常を持つたんぱく質として認識させ、分解を誘導する

②上流の調節因子に作用して分解誘導

たんぱく質は翻訳後調節を受け、それにより安定性が変化する。Cedillaでは培養細胞ベースのハイスループットスクリーニングを用いて標的たんぱく質の安定性を制御する上流分子探索を行っている

③たんぱく質孤立化による分解誘導

Protein Interactomics解析によって標的たんぱく質とたんぱく質ーたんぱく質間相互作用する分子を同定し、標的たんぱく質の安定性に関与するたんぱく質相互作用を明らかにする(wikipediaのinteractome参照

④プロテオーム感受性マッピング

たんぱく質の安定性を測るためのプロテオーム感受性マッピング解析を行っている。個々のたんぱく質の分解メカニズムを明らかにする

パイプライン:未開示(がん領域の創薬が中心)

コメント:

・個々のたんぱく質の寿命は非常に異なっている。つまり生体内ではたんぱく質ごとに寿命を決めるメカニズムがあると考えられる。それを明らかにすることで創薬するというのは非常に面白いアプローチだと思う。ただ、個々のたんぱく質ごとに全く異なる経路があるわけでなく、同一の分解メカニズムで制御されている集団もあるだろうから、ある程度の副作用は想定される。そのために最初はがんをターゲットとしているのだろう。

・ホームページ内には、がん以外にも中枢神経疾患や遺伝子疾患への応用も考えられると書いてあるが、これらの疾患は長期での服用が必要となるケースが多く、がん治療での副作用の結果を見てから、それらの領域への拡大も考えていくのだろう。

・似たようなアプローチだが真逆の方向として、たんぱく質の折りたたみ異常を正常化する創薬を行っているのがYumanity Therapeuticsである。このように最近、たんぱく質の品質管理に着目した創薬が増えてきている印象がある。

キーワード:

・たんぱく質分解誘導

・低分子化合物

・がん

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

 

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