top of page

再生医療の今後について考えてみる

  • 執筆者の写真: Ken Yoshida
    Ken Yoshida
  • 2019年6月16日
  • 読了時間: 5分

このところずっと海外バイオベンチャーの紹介ばかりしていたのですが、久しぶりに自分の意見を書いてみたいと思います。

今回のトピックはタイトルにもある通り「再生医療の今後について私が考えたこと」です。

iPS細胞から作った網膜色素上皮細胞シートの他家移植、iPS細胞から作ったドパミン神経前駆細胞の他家移植などの臨床研究、治験が実施されるなど、再生医療の臨床開発が進んでいます。

海外でもAsterias BiotherapeuticsのES細胞から作ったオリゴデンドロサイト前駆細胞移植による脊髄損傷治療やBlueRock TherapeuticsのiPS由来分化細胞を用いた心筋梗塞・パーキンソン病治療などが進められています。

再生医療は、これまでの低分子化合物や抗体を用いた治療法では治せなかった疾患が治療できる可能性がある、夢の治療法だと思います。

しかし現状を見ていると、自家移植の場合は安全性は高いがコストがかかり過ぎる(参考)、他家移植の場合は免疫抑制剤を必要とする疾患が多い(例外:間葉系幹細胞は他家でも免疫応答を起こしにくい、目や脳は免疫特権部位で免疫応答を起こしにくい)というような問題が浮き彫りになってきています。

中でも細胞をコントロールし製品化することの難しさは特にやっかいな問題だろうと思います。

製剤化、輸送の問題、未分化細胞などのコンタミによるがん化のリスク、高額培地、培養技術の安定性、大量製造法などなど、新しい治療法だけに、チェックしなければいけないこと・確立しなければいけないことは相当あります。

もちろん取り組まれている関係者の方々がこれらの問題を解決していくのでしょうが、数千万円する医療費が一気に10分の1になることはすぐにはないだろうと思います。

そんな中で私が考える今後の再生医療の展開ですが、3つの可能性があるかなと思います。

①希少疾患限定で今後も高額な再生医療が開発される

希少疾患の場合、対象となる患者さんも限られるため、数千万円しても、OK(ということにする)。ただし企業はそれほど儲からないかもしれません(これまでの承認済み再生医療製品はそれほど儲かっていない)。

②細胞外小胞(エクソソームなど)、放出液性因子(サイトカインなど)による治療法

一部で進められている、細胞が分泌するものを用いた治療法です。間葉系幹細胞のエクソソームは、治療効果をもつ可能性が報告されてきています。細胞そのものを用いた治療法よりは、がん化リスクなどの低減が期待されます。ただ、再生を促すほどの効果が出るかどうかは未知数です。

③内在性の幹細胞を用いた治療法

ヒトの生体内にある幹細胞を活性化することで再生を促す治療法です。大阪大学の玉井克人教授のグループは、HMGB1というたんぱく質を静脈投与することで内在性の幹細胞を活性化し皮膚組織の再生を促す表皮水疱症治療法の臨床開発を行っています。

---------------

ここからはがっつり個人的意見です(これまでの内容もいっぱいバイアス入ってますけど)。

3つの可能性、どれもあり得るとは思いますが、私は③に注目しています。

というのも、再生医療の中で1番再生が促される可能性が高いかなと思うからです。

①は細胞が定着しにくいという問題があります。もちろんちゃんと定着していると謳っているものもありますが、移植細胞そのものではなく、細胞から放出されたサイトカインなどが治療に効いているというようなケースが今のところ多いです。

②については再生を促すエクソソームとかが見つかる可能性もあるかもしれませんが、現状はよく分かりません。DDS担体としてのエクソソームの可能性は結構面白いのではと思います(参考:Evox Therapeutics)。

③については、内在性幹細胞をどのようにして活性化するのか?という方法を同定する必要がありますが、免疫抑制剤の必要はないし、細胞そのものを投与することはないので、製品化などの課題が少なくなります。

問題は「内在性幹細胞をどのようにして活性化するのか?」です。

これに関して臓器ごとにいろいろな報告がありますが、私は電気刺激による内在性幹細胞活性化に着目しています(例えばこれとか)。

それぞれの臓器は末梢神経からの投射を受けているので、末梢神経を適切に刺激してやれば、内在性幹細胞が活性化されるんじゃないかと思っています。

それで、どうやって末梢神経を刺激するのかですが、片頭痛やうつ病治療に用いられているデバイス(これとか、他にもいろいろあります)を用いる方法などもあり得るかもと思います。

あとはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに光刺激応答性Naチャネル遺伝子を搭載して、末梢神経に発現させて、光刺激で末梢神経を活性化する方法もありかもしれません。

それから、これはちょっとどうやってやるのかビジョンが明確じゃないですが、最近見て面白いなと思ったのが、この「がん組織に脳から神経細胞が移動してきてがん細胞の増殖を助ける」というNatureの報告です(こちらから)。

この場合、移動してきた神経細胞はがんの増殖に寄与してしまっていますが、同じようなことを内在性幹細胞を相手にできるかもしれない?と考えました。

つまり「脳から神経細胞が移動してきて、病気の臓器の内在性幹細胞を刺激して、再生を促す」というコンセプトです。

今のところ、どうやって脳から病気の臓器へ神経細胞を移動させるのか?という問題があり、そこはアイデアなしです。

病気の臓器に幼若神経細胞を移植すれば再生を促すことが出来るかもしれませんが、それだと結局今の再生医療の問題点に逆戻りしてしまいますし。。。

とまあ、レベルの低いアイデアをだらだらと書いてしまいましたが、自分の考える再生医療の今後についてでした。

参考になれば幸いです。ご質問ご意見はお気軽にkenyoshida36@gmail.comまで。

最新記事

すべて表示
bottom of page