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Dewpoint Therapeutics (Cambridge, MA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第112回)ー


細胞内での液−液相分離、液相−固相転移に着目し、異常たんぱく質が蓄積する疾患(神経変性疾患など)に対する創薬を行っているバイオベンチャー

背景とテクノロジー:

筋萎縮性即索硬化症(ALS)などの神経変性疾患において、不溶性のたんぱく質(やペプチド)が神経細胞の細胞質内・核質内に蓄積し、細胞が死んでしまうという仮説がある。これは遺伝学的解析により見つかった、病気と関連する変異が見られた遺伝子の特性を解析した結果、不溶性(難溶性)になりやすかったり、凝集性がみられたりしたことから出てきている。

・細胞質内・核質内で不溶性(難溶性)の凝集体を形成するメカニズムとして、液−液相分離液相−固相転移が関与していることが報告されてきている。

・細胞質や核質内は、均質な液ではなく、さまざまな分子が濃密に集まっている場所や、密度の薄い場所があり、濃密に集まっている分子群は液滴(ドロップレット)を形成している。このように、同じ液相でありながら分かれている現象が、液−液相分離と呼ばれる(詳細はこちら)。また、細胞質・核質中の分子が強く凝集することで固体化する、液相ー固相転移という現象も報告されている。

・例えば、、ALSや前頭側頭葉型認知症(FTD)において見られる遺伝子変異である、c9orf72遺伝子の最初のイントロンでのGGGGCC 6塩基反復配列の異常伸長において、この異常配列から翻訳されるジペプチドリピートが、ゆるく凝集し液滴を形成(液−液相分離)し、構造的にストレス顆粒を形成することが報告されている(参考)。

・それ以外にも、ALSの原因遺伝子の一つとして知られるFUS(Fused in Sarcoma)は、一分子がばらばらの液相の状態から、FUS同士がゆるくつながった液滴の状態(液−液相分離)となる。それが時間とともにFUSが強く凝集し線維状構造に固相化する。この線維状構造はFUS分子にALS患者さん由来の変異が入っている場合に強く誘導されることがドイツ・マックスプランク研究所のAnthony Hymanらによって報告されている(参考)。

・これらのような液−液相分離、液相−固相転移のような現象はFUSやc9orf72ジペプチド以外にもhnRNPやTDP-43などのALSの原因遺伝子として報告があるRNA結合たんぱく質遺伝子において報告がある。

・そこでこの液−液相分離、液相−固相転移に着目し、神経変性疾患治療の創薬を行うために創業されたのがDewpoint Therapeuticsであり、創業メンバーの一人には先のFUSによる液相−固相転移を報告したマックスプランク研究所のAnthony Hymanがいる。

パイプライン:未公表

液−液相分離、液相−固相転移を制御するメカニズム、分子が報告されており、これらをターゲットとした創薬が行われると推測される。対象疾患はALSを中心とする神経変性疾患だろう。

コメント:

・まだターゲット分子や、どういうモダリティを使うのかは明らかではないが、例えば核内輸送受容体であるKapβ2がFUSの液−液相分離を抑制するという報告もあり(参考)、これからターゲット分子が報告されてくるのだろう。

・tauにおいても液−液相分離の報告がある(参考)ことから、アルツハイマー病創薬への応用も試みられているのかもしれない。細胞内に異常蛋白が蓄積する現象はこの他にもパーキンソン病など多くの神経変性疾患で見られる。神経変性疾患のほとんどは疾患そのものに対する有効な治療薬がないため、治療薬が作ることができることが期待される。

・神経変性疾患、特にALSの原因遺伝子として、液−液相分離や液相−固相転移が起こりやすい分子群がリストアップされているのは興味深い。しかし、原因メカニズムに関与していると言っても、その現象を抑制することで疾患治療につながるとは限らないことに留意は必要(発症してすでにその現象が起こっている患者さんに、発症後にその現象を抑えることに治療効果が見えるかどうかはやってみないと分からない)。

キーワード:

・液−液相分離・液相ー固相転移

・神経変性疾患(ALSなど)

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

 

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