バイオベンチャーの立ち上げとしては最大級の250億円規模の資金によって創業された、iPS細胞を用いた細胞治療創薬を開発しているバイオベンチャー。他家移植可能な細胞移植療法を目指す。
ホームページ:https://bluerocktx.com/
背景とテクノロジー:
・2006年に山中伸弥京都大学教授らによって発見されたiPS細胞の実用化が進展してきている。例えば理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーらによって加齢黄斑変性症への他家細胞移植療法の臨床研究が進められている。また京都大学iPS研究所の高橋淳教授らによってパーキンソン病への他家iPS細胞由来ドーパミン神経細胞移植療法の治験がスタートした。
・このようにiPS細胞を用いた治療法の開発では日本がリードしている(外国では、例えばCynata Therapeuticsが、iPS細胞から分化させた間葉系幹細胞による移植片対宿主病(GVHD)治療の治験を進めている)。アメリカでは体性幹細胞やES細胞を用いた細胞治療の方が進んでいる(例:Asterias BiotherapeuticsによるES細胞から分化させたオリゴデンドロサイト前駆細胞を用いた脊髄損傷治療、ReNeuronの神経幹細胞を用いた脳梗塞治療など)。
・2016年、バイエルなどが中心となってiPS細胞を用いた細胞治療法を開発するバイオベンチャーBlueRock Therapeuticsが設立された。資金はなんと2億2500万ドル(およそ250億円)。Universal Cellsの保有する他家移植可能な細胞技術とiPS細胞技術、そしてBlueRock独自に保有する特異的で純度の高い分化細胞をiPS細胞から得る技術を組み合わせて、循環器疾患や神経変性疾患、自己免疫疾患の治療法を開発している。
パイプライン(詳細非開示):
・心臓発作(心筋梗塞)や慢性心不全の心筋再生プログラム
iPS細胞から分化させた心筋細胞を用いた心筋再生を通して、損傷した心臓の電気的機能と収縮機能を復元することを目指す。
開発中の適応症
・非臨床研究段階
心筋梗塞、慢性心不全
・神経変性疾患の幹細胞治療プログラム
iPS細胞から分化させたドーパミン神経細胞を用いた細胞移植療法によるパーキンソン病治療を目指す。
開発中の適応症
・非臨床研究段階
パーキンソン病
最近のニュース:
BlueRockはUniversal Cellsの保有する独自技術であるHLAが除去された他家移植可能な細胞の使用ライセンスと共同研究契約を締結。
BlueRockは自身の持つiPS細胞の技術を、Editasは自身の持つCRISPR技術を持ち寄り、BlueRockは神経、循環器分野、Editasはがん領域の研究を共同で行う契約を締結。
コメント:
・パイプラインから分かるように、現段階においては日本の研究の方が進んでいるようだ。幹細胞研究の第一人者や心筋細胞治療研究者、神経細胞分化の研究者などが共同創業者となっており、iPS細胞から分化させるところに差別化ポイントがあるのだろうと推測する。実際、未分化細胞や他の細胞に分化してしまった細胞を除去することは重要であり、そこにはいろいろノウハウが必要だ(京都大学iPS細胞研究所の齊藤博英教授らが発明したRNAスイッチ技術が面白い(参考))。
・Universal Cellsの細胞技術のライセンス供与が受けられたのは大きい。日本では免疫特権部位(免疫反応が起こりにくい臓器)である眼や脳への細胞移植を行うことで移植による拒絶反応のリスクを低減した分野が先行しているが、BlueRockは免疫反応が起こりやすい臓器(心臓、肝臓など)への適応もハードルが低くなる。
・iPS細胞の治療応用で出遅れている部分を取り戻すために資金力で一気に攻めてきているのだろうか。細胞治療のネックである大量製造のところに資金を投入するつもりかもしれない。
キーワード:
・細胞治療
・iPS細胞
・他家移植
・パーキンソン病
・心疾患
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。