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Regulus Therapeutics (San Diego, CA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第96回)ー


核酸医薬品をリードするIonis PharmaceuticalsAlnylam Pharmaceuticalsが2007年に作った、マイクロRNAにフォーカスした核酸医薬品のバイオベンチャー

ホームページ:http://regulusrx.com/

背景とテクノロジー:

・マイクロRNA(miRNA)は20から25塩基の長さのノンコーディングRNA(たんぱく質に翻訳されないRNA)の1種であり、植物からマウス、ヒトと多くの種で存在が確認されている。内在性のmRNAに結合することで遺伝子の発現を制御する(部分相補的な配列(完全に相補的でない配列)のさまざまな遺伝子の発現を制御するため、どの遺伝子の発現が制御されるかはmiRNA配列からだけでは明らかにできない)。

・miRNAはがん、線維症、炎症性疾患、神経変性疾患などに関わっているとされている。特にがんへの関係については多くの報告がある。治療薬のターゲットとして、診断のバイオマーカーとしての可能性が示されている。

・Regulus Therapeuticsは、miRNAをターゲットとした創薬を行っているバイオベンチャーで、miRNAに結合しその機能を抑制するanti-miRや、miRNAの機能をミミックする核酸医薬品の開発を行っている。

・Regulus Therapeuticsでは、さまざまな組織におけるmiRNAの発現プロファイルに関するデータを持つ。また化学修飾による、核酸医薬品の特定組織へのデリバリー技術を開発している。また、特定のmiRNAの特定の疾患への治療応用に関する特許を保持している。

パイプライン:

RG-012

miR-12に相補的に結合しその機能を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド。miR-12を抑制することで、腎臓細胞におけるα型ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体/レチノイドX受容体の活性化を引き起こし、ミトコンドリア機能を増強する。また、miR-12の阻害により、TGFβ依存的な線維化・炎症を抑制する。これらの作用から慢性腎疾患に対する効果が期待される。皮下投与。Sanofi Genzymeとの共同開発。

開発中の適応症

・Phase II

アルポート症候群(4型コラーゲンを構成するたんぱく質をコードする遺伝子の変異による。腎機能が進行性に障害される疾患)

RGLS4326

miR-17に相補的に結合しその機能を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド。腎臓に指向性を持つように化学修飾された核酸技術を用いている。miR-17を阻害することで腎臓における嚢胞(組織内にできる水袋)の増加を抑制する。皮下投与。

開発中の適応症

・Phase I

最近のニュース:

RG-012に関するグローバルの開発および製品化の権利をSanofiへ供与する契約(修正)の締結

Alnylamが持つmiR-33aと33bのアテローム性動脈硬化症および代謝性疾患への治療に関するライセンスをRegulusへ供与する契約の締結

コメント:

・上記パイプライン以外に、非臨床段階でB型肝炎ウイルス、多形神経膠芽腫、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を対象としたプログラムを持つ(参考)。

・現行の核酸医薬品技術では、静脈内投与や皮下投与などの全身投与すると肝臓もしくは腎臓への指向性を持つ。そのため、それらの臓器の疾患へのアプローチ以外は難しい。Regulus社固有の問題ではないが、今後の核酸医薬品のキーになるところだと思う。

・一方で眼(硝子体内投与)、脳(髄空内投与)という局所投与であれば、核酸医薬品を作用させることができる。ただ、これらの方法は侵襲性が高いため、繰り返し投与するのはQOLが下がり、シビアな疾患に限定される。Regulus社が今後その方向に向かうのか、新たなデリバリー技術の開発によって他の臓器への指向性を持つものを見出すのか、注目される。

キーワード:

・核酸医薬品

・マイクロRNA

・腎臓疾患

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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