免疫を調節する新しい標的分子を見つけるプラットフォームFIND-IO Technologyを駆使してファーストインクラスの免疫療法薬の開発を行っているYale大学発のバイオベンチャー
ホームページ:http://www.nextcure.com/
背景とテクノロジー:
・抗PD-1抗体Nivolumab(オプジーボ)が多くのがん種に効果を持つことが分かって以降、免疫を調節する新たな標的分子の探索が進んでいる。しかし、PD-1、CTLA-4などの免疫チェックポイント阻害分子以上の効果を持つ可能性がある標的分子はなかなか見つかっていない。
・抗PD-1抗体は効果をもつ患者さんは全体の2-3割に限られるため、既存の免疫チェックポイント阻害薬が効かないがん患者さんへの治療薬が求められている。
・NextCureが持つ独自技術であるFIND-IO Technologyは、細胞の機能を測定する評価系をベースとしたスクリーニング法で、免疫細胞と病気の細胞(がん細胞など)の膜表面に発現する分子の相互作用を測定する。この方法を用いることで、がん微小環境にある抑制性のミエロイド系細胞(マクロファージや顆粒球)、一部のT細胞を調節し、がんへの治療効果が期待できる新たな方法に関する知見を得ている。
・FIND-IO Technologyの詳細は不明だが、免疫細胞と非免疫細胞(がん細胞など)の間で分子間相互作用が行われ、免疫細胞のNF-κBシグナルが活性化するとGFPが発現する細胞系を用いて、フェノタイプベースのスクリーニングを行い、新規の免疫調節分子を同定しているようだ。
パイプライン:
・NC318
Siglec-15を標的とする抗体医薬品。非臨床データによると肺がんや子宮がんのがん微小環境において抑制性ミエロイド系細胞にSiglec-15の発現が見られ、抑制性ミエロイド系細胞の生存を抑制している。また、Siglec-15を発現する抑制性ミエロイド系細胞はT細胞の機能を障害することでがんの増殖を助けていると考えられる。
開発中の適応症
・Phase I/II
肺がんや子宮がんなどの固形がん
・NC410
ターゲット分子非開示の抗体医薬品。NC410のターゲット分子はT細胞や抑制性の抗原提示細胞(樹状細胞含む)に発現する。NC410はT細胞の増殖や一部の免疫細胞の分化を調節する。免疫抑制機構を阻害する作用を持つ。
開発中の適応症
・IND申請可能段階
血液がん、固形がん
最近のニュース:
Eli Lillyとがん免疫治療薬の探索と開発を行う共同研究契約を締結。Eli LillyはNextCureのFind-IO Technologyを用いて新たながん免疫治療薬の探索を行う。
コメント:
・CEOのMichael Richmanは以前は炎症性T細胞の分化を抑制する自己免疫疾患治療薬AMP-110などを開発していたAmplimmuneのCEOだった。Amplimmuneは2013年にAstraZenecaに買収された。その他のバイオベンチャー立ち上げにも関わったシリアルアントレプレナーで、こういう人がたくさんいることが現在のアメリカのバイオベンチャー隆盛の一因になっている。
・免疫の新規調節分子を探索する試みはアカデミア、製薬会社、バイオベンチャーなど至るところで行われている。この会社のFIND-IO TechnologyはEli Lillyが共同研究するほどの技術だが、どのような独自性がある技術なのか、他とは違う新規分子が取れるノウハウがどこにあるのか、詳細が知りたい。
キーワード:
・がん免疫
・抗体医薬品
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。