腎不全による人工透析移行を防ぐために、独自技術である3D培養された腎臓細胞を移植する細胞治療による慢性腎臓病治療法を開発しているイスラエルのバイオベンチャー
ホームページ:https://www.kidneycure.com/
背景とテクノロジー:
・腎臓の慢性的な障害である慢性腎臓病(CKD)は、10人に1人が罹患しているとされる疾患である。症状としては、むくみ・倦怠感・貧血・夜間頻尿など軽い症状だが、病気が進行して腎不全となると血中の老廃物を排出できずに尿毒症となるため、人工透析や腎臓移植が必要となる。一度機能低下した腎機能は元に戻ることはない。
・腎臓は内在性の幹細胞から再生することができない。また、複雑な構造をしており、1種類の細胞を移植しても機能を発揮できない。そこでKidneyCureでは患者さん自身の腎前駆細胞を活性化させて移植する治療法を開発している。
パイプライン:
・ANS-001
患者さん自身の腎前駆細胞を採取し体外(シャーレ上)で培養し、活性化して増殖を促進することで3次元の細胞複合体を形成させる。この複合体を患者さんの腎臓に移植する。
開発中の適応症
・非臨床研究段階
慢性腎臓病
・ANS-002
患者さんの尿中から得られた細胞を培養し、3次元の細胞複合体を形成させる。この複合体を患者さんの腎臓に移植する。非侵襲的に細胞を採取することができ、ANS-001より多くの細胞を採取できるとのこと。
開発中の適応症
・非臨床研究段階
慢性腎臓病
コメント:
・ANS-001は腎臓の生検から細胞を採取しており、この方法はリスクがあり多量のサンプルも得られない。シャーレ上で増やすにしても十分量の細胞が得られるのだろうか?(間葉系幹細胞の例を見る限り、自家細胞の場合、患者さんごとに細胞の増殖率はかなり違うのではと思う)
・ANS-002の尿中から細胞が採れるというのは知らなかった。もしこれが安定的に十分量採れるなら凄い技術だと思う。どれくらいの量の細胞が採れるのか?どんな種類の細胞が採れるのか?ご存じの方教えてもらえませんか?
・基本的にこれらの細胞治療は移植細胞の生着率が低いケースが多い。この細胞治療も数ヶ月で体内から消失するのだろうか?それとも前駆細胞が分化して機能的腎臓細胞になっているのだろうか?もちろん移植細胞からの栄養因子放出による効果でも良いのだか、その場合は効力が限定的である可能性が高い。ただ、人工透析に移行するまでの期間を少しでも延長させることができるのであれば、ニーズは高いのではと思う。
・日本のバイオベンチャーであるBIOSはiPS細胞由来ネフロン前駆細胞から腎臓再生する治療法を開発しており、臨床研究入りが近づいてきているとのことだ(参考)。熊本大学などでは腎臓オルガノイドの研究も進んでいる。腎臓再生の分野では日本から世界をリードする成果が出てきており期待。
キーワード:
・細胞治療
・慢性腎臓病(CKD)
・腎前駆細胞自家移植
・3D培養
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。