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Evox Therapeutics (Oxford, the United Kingdom) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第80回)ー


細胞外に放出される小胞であるエクソソームを使った治療法を開発しているオックスフォード大&カロリンスカ研究所発のバイオベンチャー

背景とテクノロジー:

・低分子化合物以外にもペプチド、タンパク質(抗体)、核酸、ウイルス、細菌、細胞など様々なモダリティの治療法の開発が進んでいるなか、細胞が放出するナノメートルサイズの小胞であるエクソソームにも注目が集まっている(参考)。小胞内にはタンパク質やmRNA、microRNAなどが含まれているとされている。

・間葉系幹細胞を用いた細胞治療では、細胞から放出される何かが治療効果の本体であるという説があり、その候補の一つとしてエクソソームの治療効果についての研究が進んでいる。

・治療への応用だけでなく、細胞から放出されるエクソソームの変化を検出し、病気の診断ができないかという検討も行われている。

・Evox TherapeuticsではエクソソームをDDSのためのキャリアとして用い、目的の細胞に対してタンパク質やRNA、低分子を送達させるためのエクソソーム技術を独自開発している。

・Evox Therapeuticsの技術では、エクソソームの表面上に特定のタンパク質を発現させることで、エクソソームを特定のターゲットに対して送達させることが可能となる。

・加えてEvox Therapeuticsではエクソソーム内に特定のタンパク質やRNAを入れることができる技術を持つ。これにより、エクソソーム内にモノクローナル抗体やsiRNAを入れることが可能となる。

パイプライン(詳細不明):

タンパク質を補充するエクソソームを用いて治療する。候補最適化段階。

様々なライソゾーム病

欠損している酵素を持つエクソソームを用いて治療する。探索研究段階。

希少な代謝性疾患

タンパク質、mRNAを含有するエクソソームを用いて治療する。探索研究段階。

非開示のRNAを標的とするプログラム

RNAを送達するエクソソームを用いて治療する。候補最適化段階。Boehringer Ingelheimとの共同研究。

CNS疾患(詳細非開示)

低分子を送達するエクソソームを用いて治療する。探索研究段階〜候補最適化段階。非開示パートナーとの共同研究。

最近のニュース:

Evox TherapeuticsはBoeringer IngelheimとRNAを送達するエクソソームを用いた治療法開発に関する共同研究契約を締結した。

コメント:

・siRNAやアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの核酸医薬品は、DDS技術の関係から肝臓への適応が中心となっている。Evox TherapeuticsのエクソソームによるRNAデリバリー技術によって、様々な臓器に対して核酸をデリバリーできるのであれば、非常に有用な技術となる可能性がある。

・CNS疾患への適応も考えられており、血液脳関門を通過できるエクソソーム技術を持っているようだ。どの程度脳へとデリバリー出来るのか効率が気になるところ。

・細胞治療では常に移植された細胞が制御できなくなる懸念点がつきまとう(ガン化のリスクなど)。エクソソームを用いて細胞治療と同等の効果を示せるのであれば非常に興味深い。

・他家細胞によって作られたエクソソームが拒絶反応によって除去される可能性はないのだろうか?(詳しい方教えて下さい)

キーワード:

・エクソソーム

・ライソゾーム病

・希少疾患

・DDS

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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