マウスの実験により発見された若返りを促すタンパク質を使った加齢性疾患治療薬の創製を目指すハーバード大発のバイオベンチャー
ホームページ:https://www.elevian.com/
背景とテクノロジー:
・先進諸国において人口の高齢化が進む中、アルツハイマー病などの加齢性疾患が社会問題になってきている。しかし、加齢性疾患に対する治療薬開発はうまく行っていないものが多い。
・加齢に関する研究が進められる中、2005年、スタンフォード大のDr. Thomas Randoのグループは パラバイオーシス(並体結合)という若いマウスと高齢マウスの血流をつなぐ実験によって、若いマウスの血中因子により高齢マウスが若返ることを報告した(参考)。
・2014年ハーバード大のグループから、この高齢マウスが若返る現象に関わっている血中タンパク質として、Growth Differentiation Factor 11 (GDF11)が報告された(参考1、参考2)。著者らはこれらの報告の中で、血中にGDF11を投与することで、筋肉の機能が回復すること、マウス脳の血流や鼻の神経の神経新生が増加することなどを示した。
・上記2014年の報告を行ったハーバード大のグループが創業メンバーとなり、この研究成果に基づいた治療薬開発を行っているのがElevian社である。
・GDF11は血中に投与されても長く留まることができないため、そのままだと毎日静注する必要がある。Elevian社では長期作用が可能なGDF11の製剤化を試みている。
パイプライン(詳細非開示):
・冠動脈疾患(非臨床研究段階)
・II型糖尿病(非臨床研究段階)
・アルツハイマー病(非臨床研究段階)
・サルコペニア(基礎研究段階)
最近のニュース:
Elevian社の紹介記事
コメント:
・Novartisのグループが、高容量のGDF11をマウス血中に投与すると、老化が進み筋肉再生を阻害するという反証論文を015年に報告しているのは懸念点(参考)。
・類似のベンチャーとして、同様にパラバイオーシスの研究から同定した血中の加齢促進因子の阻害で加齢性疾患治療を目指しているスタンフォード大発のベンチャーAlcahest社がある。
・加齢はアルツハイマー病の最大のリスク因子ではあるが、年を取れば全員がアルツハイマー病になるわけではない。アルツハイマー病になる原因メカニズムの阻害と若返り促進(もしくは加齢因子の阻害)の両方の処置を同時に行うことで、アルツハイマー病が治療できる未来が来るかもしれない。
キーワード:
・加齢性疾患(サルコペニア、アルツハイマー病)
・血中若返り因子
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。