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Vividion Therapeutics (San Diego, CA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第75回)ー


プロテオーム解析法を用いた、これまでundruggableと考えられていたターゲット分子に作用できる低分子化合物を探索する技術により新たな治療薬創出を目指すバイオベンチャー。

ホームページ:http://www.vividion.com/

背景とテクノロジー:

・従来の一般的な化合物ライブラリーからは結合する化合物を見出すことができず、undruggableと考えられているターゲット分子は数多い(転写因子など)。

・米スクリプス研究所のProf. Benjamin Cravattのラボにおいて、システイン残基などの求核性アミノ酸に対して共有結合することでタンパク質の機能を変化させられるフラグメント(低分子化合物の一部)を見出す技術を開発した。これは、フラグメントライブラリーの中から、タンパク質と結合できるフラグメントをプロテオーム解析を用いて検出する方法である(Fragment-based ligand discovery (FBLD))。

・FBLDでは、フラグメントライブラリーと細胞(もしくは細胞懸濁液)を混ぜ、UV-クロスリンク法で固定したあとLC-MSを用いて検出し、フラグメントありなしで変化するピークを検出する。

・Vividion TherapeuticsはProf. Benjamin Cravattのラボからスピンアウトして作られたバイオベンチャーで、この技術をベースにこれまでundruggableと考えられていたターゲット分子に対して作用できる低分子化合物を見つけ出すことを試みている。

・この手法によりアロステリック効果を持つ化合物や、タンパク質ータンパク質間相互作用を調節できる化合物、分解誘導薬などを見出すことが期待される。

パイプライン:未公開

最近のニュース:

Vividion Therapeuticsが持つ化合物探索技術を用いて、がん・炎症性疾患・神経変性疾患に対する新たな低分子治療薬創製に取り組む共同研究契約を締結。ユビキチンープロテアソームシステムに作用する化合物創出を目指す。

コメント:

・Vividion Therapeuticsのコア技術の開発者であり創業メンバーの一人である米スクリプス研究所のProf. Benjamin Cravattのラボでは、システインに対する共有結合型化合物だけでなくリジンに作用する化合物群を見出す方法も報告している(参考)。

・共有結合型の化合物は通常非可逆的なので、ターゲット分子が分解されるまで効果が持続する。これはオフターゲット効果やオンターゲット毒性がある場合は強い毒性が出てしまう可能性がある。Principia Biopharmaでは可逆的な共有結合型低分子化合物の開発を行っている(参考)。

キーワード:

・共有結合型化合物

・フラグメント創薬

・プロテオーム解析

・低分子化合物

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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