ディープラーニング技術を用いたネオアンチゲンの選定と、2種のウイルスベクターを用いたネオアンチゲンの発現という2つの独自技術によるがん免疫療法を開発しているバイオベンチャー
背景とテクノロジー:
・PD1抗体、PD-L1抗体などのがん免疫療法が大きな効果を持つことが臨床で示されてきているが、一方でこれらの治療法に効果を持つ患者さんは全体の2−3割に留まる。この原因の一つとしてがんが免疫から逃れるメカニズムの多様性が考えられる。
・そこでがん患者さん個別のがんのタイプを同定し、それぞれのがんに対する個別化医療の開発が進んでいる(参考:Neon Therapeutics)
・Gritstone Oncologyでは、がん細胞で変異しているタンパク質の変異部分を抗原とする、ネオアンチゲン療法に取り組んでいる。これは、がん組織の生検サンプルを取り出し、そのサンプルについて次世代シーケンサーを用いてゲノム解析を行い、がん細胞でのみ変異している配列を同定、その変異している配列の中で抗原として最も適した配列をディープラーニング技術により予測し決定する。これを患者さんごとに行う。
・同定されたネオアンチゲンをコードする遺伝子をウイルスベクターに組み込み、患者さんにチェックポイント阻害薬とともに筋肉内投与することでネオアンチゲンが患者さんの体内で発現し、それを認識する免疫反応が起こる。これによりがん組織に反応する免疫を獲得し、がんを治療するという戦略である。
パイプライン:
・GRANITE-001
ウイルスベクターを用いたネオアンチゲン+チェックポイント阻害薬との併用療法。
開発中の適応症
・非臨床段階(2018年中のPhase 1/2開始を予定)
固形がん(転移性非小細胞肺がん、膀胱がん、胃食道がん、大腸がんなど)
最近のニュース:
RNA-based個別化ネオアンチゲン免疫療法を送達するため、Arbutusの持つ脂質ナノパーティクル(LNP)技術のライセンス契約締結
上記GRANITE-001プログラムについてBMSと共同臨床開発契約を締結。BMSの持つチェックポイント阻害薬、オプジーボ(PD-1抗体)やヤーボイ(CTLA4抗体)との併用療法を行うため。
コメント:
・ウイルスによるネオアンチゲン免疫では、heterologous prime/boost immunizationを行っている。これはアンチゲンを単回投与するのではなく、追加免疫を行う(参考:追加免疫効果)ことで、効果が増強される。
・ウェブサイトでは、ウイルスベクターとして何を用いているのかが書かれていなかったが、BMSとの共同臨床開発ではプライムはアデノウイルス、ブーストは月ごとにself-replicating RNA-based vector(詳細不明)投与という形でheterologous prime/boost immunizationを行うようだ。
・がん細胞でのみ変異しているDNAの中で抗原として最も適したものを予測決定するところがキーだろう。ディープラーニング技術を用いているということは、何が決定因子なのかブラックボックスということか。
キーワード:
・ネオアンチゲン
・ウイルスベクター
・ディープラーニング
・がん免疫療法
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。