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Arvinas (New Haven, CT, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第72回)ー


タンパク質分解誘導薬という新しいコンセプトの治療薬創製を目指すトップランナーのバイオベンチャー。PfizerやGenentech,Merckなど大手製薬と提携。

ホームページ:http://arvinas.com/

背景とテクノロジー:

・タンパク質分解誘導薬について詳しくはPfizerのSenior Scientist、masayaさんのブログがおすすめ(こちら)。

・これまでの低分子化合物は、活性部位にポケットと呼ばれる構造を持つタンパク質しかターゲットにすることができなかった。これは全タンパク質の25%程度と言われている。それ以外のタンパク質に作用できる低分子化合物を標的とする薬はこれまで狙って作ることは難しかった。

・Arvinasの創業者の一人であり、Chief Scientific AdvisorであるYale大学のProf. Craig M. Crewsが開発し、Arvinasが持つ独自技術であるPROTAC(Proteolysis-Targeting Chimera)は、上記の問題の解決策の一つとして期待されている。

・生体内においてタンパク質は不用になると分解される。これは、E3ユビキチン転移酵素という分子によって認識されてユビキチンが付加され、そのユビキチンにユビキチンがつながってポリユビキチン化されることで目印となり、ポリユビキチン化されたタンパク質は細胞内になるプロテアソームというタンパク質分解酵素の集まった袋に運ばれ、分解される。

・PROTACはターゲットタンパク質とE3ユビキチン転移酵素をつなぐ低分子化合物を投与することによって、ターゲットタンパク質のポリユビキチン化を促し、病原となるタンパク質の分解を誘導する技術である。

・これまでの低分子化合物と異なり、ポケットがないターゲットタンパク質に対する薬を作ることが出来る可能性がある。一方で、化合物内でターゲットタンパク質を認識する部分と、E3ユビキチン転移酵素を認識する部分の両方を併せ持つ必要があるため、必然的に化合物の分子量が大きくなる。そのため、脳に入る化合物をデザインすることは困難である。また、一般的に分子量が大きいと消化管からの吸収率も下がる傾向があるため、工夫が必要である。

パイプライン:

アンドロゲン受容体プログラム(ARV-110)

PROTAC技術を用いたアンドロゲン受容体分解誘導薬。経口投与。前立腺がんにおいてアンドロゲン受容体が過剰発現/遺伝子変異しているため、アンドロゲン受容体を分解することで治療するというコンセプト。

開発中の適応症

・IND申請可能段階

去勢に対して治療効果が十分でない前立腺がん

エストロゲン受容体プログラム

PROTAC技術を用いたエストロゲン受容体分解誘導薬。経口投与。乳がんと診断された新規患者さんのおよそ80%がエストロゲン受容体α陽性である。エストロゲン受容体α陽性乳がんは既存薬に対して抵抗性を示すことがある。そこでエストロゲン受容体を分解することで治療を行うというコンセプトの治療薬を開発している。

開発中の適応症

・IND申請可能段階

乳がん

最近のニュース:

ArvinasとGenentechは非開示のターゲットに関するPROTAC技術のライセンス契約を更新した

ArvinasとMerckはPROTAC技術を使用するライセンス契約を締結した。

ArvinasとPfizerは共同研究とライセンスに関する契約を締結した。

コメント:

・ターゲットタンパク質を分解誘導するという新しいメカニズムの薬に注目が集まっている。もちろん分子量が大きくなるという問題点はあるが、活性中心にポケットがないタンパク質も多いため、期待が大きいのは当然だと思う。

・ターゲットタンパク質を認識する部分の特異性が非常に重要。非特異的な結合があった場合の毒性は強そうだ。

キーワード:

・タンパク質分解誘導薬

・がん

・低分子化合物

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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