老化した細胞だけを殺すことで寿命を伸ばすコンセプトで様々な加齢による疾患の治療を目指すバイオベンチャー
背景とテクノロジー:
・先進国を中心に人口の高齢化が進む中で加齢に伴って罹患するリスクが上がる加齢性疾患に対する治療薬のニーズが高まっているが、アルツハイマー病を中心に治療薬創製がなかなか進まない。
・Unity Biotechnologyでは、老化した細胞が炎症や組織の分解を引き起こす有害なタンパク質を大量に放出することがいくつかの加齢性疾患の原因と考えている。
・そこでUnity Biotechnologyでは、老化した細胞を除去することで加齢性疾患を回復、進行抑制するというコンセプトの薬を創製することを目指している。このコンセプトをSenolytic Medicine(老化細胞除去医療)と呼んでいる。
パイプライン:
・UBX0101
MDM2とp53のタンパク質間相互作用を阻害する低分子化合物。UBX0101によって老化した細胞の除去が引き起こされる。筋骨格系疾患への適応を想定している。
開発中の適応症
・Phase 1
・UBX1967
アポトーシスの制御タンパク質であるBcl-2ファミリーのうちのある特異的なタンパク質群を阻害する低分子化合物。老化した細胞は生き残るために生存を促進させるようなメカニズムを利用しており、その過程にBcl-2ファミリー分子が関与している。UBX1967によって、アポトーシスを逃れていた老化細胞においてアポトーシスシグナルが活性化され、老化細胞除去のトリガーとなる。
開発中の適応症
・リード化合物最適化段階ーIND申請可能段階(2019年下半期でのPhase 1スタートを予定)
糖尿病性網膜症・糖尿病性黄斑浮腫、緑内障、加齢黄斑変性症
・その他リード化合物最適化段階のプロジェクト:肺線維症、血中循環している若返り因子の低下による疾患(認知症、腎疾患)
最近のニュース:
アポトーシスをターゲットとしたがん治療薬の開発を行っている中国のAscentage Pharmaと、加齢性疾患の共同研究契約を締結した。
コメント:
・2018年7月9日、Nature Medicineのオンラインに老化した細胞を除去することでマウスの寿命が延びたという報告がされた。その日本語解説記事はこちら。
・MDM2阻害によるp53のユビキチン化抑制は、がん治療薬として開発中だが、これとUBX0101とはどう違うのだろうか?老化した細胞を除去する事とがん細胞除去は同一メカニズムなのだろうか?(上記Nature Medicineの論文でも白血病治療薬のダサチニブ(+抗酸化剤クエルセチン)が老化細胞除去薬として使われている)
・同様に、UBX1967のアポトーシス促進を老化した細胞だけで促進するというメカニズムも可能なのだろうか?Bcl-2ファミリー分子に着目した薬は抗がん剤として開発中である。
・類似のプローチとして、若者の血液中に若返り因子が含まれるというコンセプトで若者の血漿を投与してアルツハイマー病を治療する臨床試験を行っているベンチャーがある(Alcahest社)。
・Unity BiotechnologyのCEOによる一般向けプレゼンの動画はこちら
キーワード:
・老化細胞の除去促進
・低分子化合物
・加齢性疾患
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。