オミックス解析などのヒトサンプル情報をAI技術で解析することで新たな創薬・バイオマーカー創出を目指すバイオベンチャー。すでに臨床ステージの自社化合物パイプラインを持つ。
ホームページ:http://berghealth.com/
テクノロジー:
・Interrogative Biology®プラットフォーム
病気のヒトと健常人のサンプルについて質量分析法などのハイスループットな機器を用いてオミックス解析を行う。解析にはゲノム(遺伝子)、プロテオーム(タンパク質)、リピドーム(脂質)、メタボローム(代謝物)が含まれる。それ以外にもミトコンドリア機能、酸化状態、ATP産生なども測定する。これらの測定により、一つのサンプルから何兆ものデータが生まれる。これらのデータと患者さんの臨床情報が結び付けられる。これらのビッグデータをDeep Learningなどの機械学習技術を用いて解析するのがInterrogative Biology® プラットフォームである。
これらのデータからバイオマーカーを見出したり、患者さん層別化の予想モデルを組むことができる。また、患者さんに効く薬を見出すプレシジョンメディスンにも使うことができる。
・Patient Intelligence™プラットフォーム
子会社BERG Analyticsによって開発されたベイジアンネットワークbAIcis® による臨床情報解析技術。ビッグデータの中から原因と結果の関係にある情報を導き出す。使用できる情報としてはゲノムなどのオミックス解析データやウェアラブルデバイスなどのデジタル機器からの健康情報、入院患者さん・通院患者さん・薬局からの情報、カルテ情報などがある。これらの情報を統合し、新たな創薬ターゲット分子、バイオマーカー、薬の作用機序に関する新たな知見を見出すことが可能となる。
パイプライン:上記BERGのプラットフォームから見出された知見から以下の創薬プログラムが進行中。
・BPM31510
正常な細胞はダメージを受けるとアポトーシスや細胞死のシグナルが活性化されるが、がん細胞ではその機構が働かなくなっている。BPM31510はがん細胞の代謝を元の状態に戻し、細胞がダメージを受けたことを検知するメカニズムを再活性化させる。静脈内投与。
開発中の適応症
・Phase 2
すい臓がん
・Phase 1
固形がん・転移がん
表皮水疱症←BPM31510の3%クリーム
・BPM31543 (Calcitriol)
ビタミンD3の生体内代謝物である活性型ビタミンD3である。頭皮への外用薬。
開発中の適応症
・Phase 1
化学療法に伴う脱毛症
・前立腺がん、心不全を対象とした診断薬のプログラムがある。
・非臨床研究段階としてパーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病を対象としたプログラムがある。
最近のニュース:
パーキンソン病などの神経疾患への新たな処置方法に関するAIを用いた探索や評価を行うAstraZenecaとの提携。AstraZenecaの化合物フラグメントがBergに供与される。
インフルエンザワクチンの効果を見るためのバイオマーカー探索に関する共同研究契約をSanofi Pastuerとの間に締結。 Interrogative Biology®プラットフォームを用いる。
コメント:
・AI創薬に取り組む会社の中では、バイオマーカー探索に関するプログラムを持つことが特長となっている。
・Sanofi Pastuerとの共同研究にもあるように、ワクチン開発時のバイオマーカーがあると便利であることから、こういう取り組みが成功すれば一気に注目が集まるだろう(インフルエンザワクチンの開発は、インフルエンザシーズンに、ワクチン投与群と非投与群で分けて臨床試験を行い、それぞれの群でインフルエンザ罹患率を比較するという方法のため、バラつきが大きく、評価が難しい。バイオマーカーがあれば開発の成功率が上がる可能性がある)。
キーワード:
・人工知能(AI)創薬
・オミックス解析
・バイオマーカー
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。