人工知能(AI)技術を用いて様々な低分子化合物デザインを行うバイオベンチャー
背景とテクノロジー:
・ビッグデータを用いて、化合物の効力、ターゲットへの特異性、ADMEなどを予測するアルゴリズムの創薬プラットフォームを持つ。
・情報が多い化合物を選択し、実際に合成しWetの実験データを得、それを基にデータを更新することで次の化合物デザインに活かすサイクルを用いる。
・従来の方法に比べて4分の1の時間で候補化合物を得ることができるとのこと。
・大きく分けて以下の3種の化合物デザインができる独自アルゴリズムの創薬プラットフォームを持つ
①シングルターゲット分子に対する選択的な化合物デザイン
すべてのデータを基に化合物デザインを行う。場合によっては表面プラズモン共鳴法(いわゆるbiacore)
のデータを取る。デザイン、合成、Wetのテストのサイクルを回すことで化合物を最適化する。
②二重特異性低分子化合物ー2つのターゲット分子に作用する化合物デザイン
複数のターゲット分子に作用することで高い効果が得られる低分子化合物をデザインする(polypharmacology)。2つのターゲットを同時に狙えるかどうかchemical tractabilityについてもAI技術を用いて検証する。
③フェノタイプ(表現型)による低分子化合物ドラッグデザイン
フェノタイプのデータやHigh Content Screeningによって得られたデータを基に化合物デザインを行う。ターゲット分子の情報なしに多次元データのみから化合物をデザインする。
パイプライン:
・Evotecとのパートナーシップ
①二重特異性低分子化合物(A2Ar + Adenosinergic Targets)ーガン免疫治療薬
②シングルターゲット分子への低分子化合物( A2Ar)ーガン免疫治療薬
・Sanofiとの共同研究
二重特異性低分子化合物(Multiple Target Pairs)ー代謝性疾患
・GSKとの共同研究
シングルターゲット分子への低分子化合物(Selected Targets)ー適応疾患非開示
・大日本住友製薬との共同研究
二重特異性低分子化合物(GPCR+イオンチャネル)ー中枢神経系疾患
・Sunovionとの共同研究
フェノタイプによる低分子化合物(N/A)ー中枢神経系疾患
最近のニュース:
Exscientia 創業者でCEOのAndrew Hopkinsへのインタビュー記事。ExscientiaのAI創薬で見つかった一つの化合物が臨床試験に向かっているとのこと。
コメント:
・フェノタイプによる低分子化合物デザインはターゲット分子不明のため、SBDDなどの他の技術が使えないので、AI創薬の真価が分かるアプローチかもしれない。どのような結果がでるか楽しみだ。Recursion Pharmaceuticals社も似たようなアプローチの創薬を行っている。
キーワード:
・人工知能(AI)創薬
・低分子化合物
・フェノタイプ創薬
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。