細胞内に低分子・ペプチド・蛋白・核酸・ナノ分子などを取り込む独自技術を用いて、細胞移植による新たながん免疫療法の確立を目指すバイオベンチャー
背景とテクノロジー:
・T細胞、間葉系幹細胞やiPS細胞から分化させた神経幹細胞・ドパミンニューロンなどの細胞移植治療の治験が進められている。最近はこれらの細胞に遺伝子導入させ、機能を付加したり増強させた細胞の移植治療などが進められているが、遺伝子導入という方法が主であり、それ以外の方法については少ない(BrainStorm Cell Therapeuticsという例がある)。
・SQZ Biotech社は、細胞を(細いチューブ状の中を通して?)圧迫することで細胞膜に一時的に穴を開け、低分子・ペプチド・タンパク質・核酸・ナノ分子を取り込ませる独自技術SQZ technologyを持つ。この技術はT細胞・B細胞・幹細胞・赤血球細胞・細胞株などに適応可能。この技術により細胞に、多能性導入・抗原提示・表現型転換・蛋白産生・パスウェイ調節などを起こすことが可能となる。
パイプライン:すべて前臨床段階
・T APC
特定のがん抗原タンパク質をSQZ technologyを用いてT細胞に取り込ませて体内に投与するがん免疫の細胞移植療法。
・B APC
特定のがん抗原タンパク質をSQZ technologyを用いてB細胞に取り込ませて体内に投与するがん免疫の細胞移植療法。Rocheとの共同研究。
・Lysate APC
患者さん自身のがん組織のタンパク質を抽出し、抗原提示細胞に取り込ませて体内に投与する個別化療法(パーソナライズドメディスン)。
・Biologic Protection
生物製剤を免疫反応から守る
・Tissue Protection
自己免疫反応の抑制
最近のニュース:
SQZ Biotech社の紹介記事。がん免疫に最初に取り組むが、自己免疫疾患や感染症領域にも適応可能な技術であるとCEOのArmon Sharei氏のコメント。
コメント:
・かわいい細胞のイラストが散りばめられたホームページはアメリカらしからぬ雰囲気
・細胞内に様々な分子を取り込めるというユニークな技術ではあるが、これをがん免疫以外のどんな疾患に適応していくかは結構アイデアが必要。DDS的に分子をデリバリーできる可能性をもつ技術だが、細胞外への放出方法・放出場所・放出タイミングをどうコントロールするかという、もう一歩進んだ技術ができればかなり応用範囲は広そう。
キーワード:
・細胞移植
・細胞内への分子注入技術
・がん免疫
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。