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Protalix Biotherapeutics (Carmiel, Israel) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第59回)


経口投与できる抗体医薬品(タンパク質製剤)という画期的技術を持つバイオベンチャー。植物細胞を用いてタンパク質製剤を安価に生産するProCellExという独自技術をうまく活用。

ホームページ:http://protalix.com/

背景とテクノロジー:

・抗体医薬品などのタンパク質製剤はハイブリドーマ細胞などの哺乳類細胞を用いてバイオリアクターで増殖させて生産する技術が用いられている。この技術は確立された技術ではあるが、コストがかかる上、哺乳類の細胞はヒトに感染するウイルスと同じウイルスが感染することができてしまうというリスクがある。

・Protalix社では哺乳類細胞ではなく植物細胞にアグロバクテリウムを用いて遺伝子導入する技術を用いて、抗体などのタンパク質製剤を生産するProCellExという独自技術を持っている。これにより、哺乳類細胞より安価でリスクの少ない生産が可能となる。

・Protalix社が持つ植物細胞によるタンパク質発現はコスト面のみならず、タンパク質製剤を発現する植物細胞をそのまま経口投与できる。抗体を含むタンパク質製剤はヒトに経口投与されると消化液によって分解されてしまうため、通常静脈内投与される。しかし、植物細胞は哺乳類細胞と違いセルロースを含む細胞壁を持つため、消化液から守られる。OPRX-106は抗TNFαタンパク質を発現する植物細胞製剤。

・経口投与可能な抗体医薬品ができれば、患者さんのQOL改善につながる。

パイプライン:

pegunigalsidase alfa (PRX-102)

植物細胞に遺伝子導入して作らせたリコンビナントのαガラクトシダーゼAタンパク質。静脈内投与による酵素補充療法。サブユニット間をPEG鎖で共有結合でつなぐことで従来品(Fabrazyme)より高活性でより安定。血中においても従来品に比べ半減期が長く高活性である。

開発中の適応症

・Phase 3

ファブリー病(αガラクトシダーゼ欠損症

Alidornase alfa (PRX-110)

植物細胞に遺伝子導入して作らせたリコンビナントのdeoxyribonuclease I (DNase I)タンパク質。actinとの結合によってDNase Iの酵素活性が阻害されるのを防ぐ化学修飾を施してあり、従来品(Pulmozyme)より高い効力が期待される。吸入投与。

開発中の適応症

・Phase 2

嚢胞性線維症(気管に粘性の高い痰がつまることを防ぐ)

clinicaltrials.govでは登録情報見つからず

OPRX-106

Tumor Necrosis Factor受容体IIと IgG1 Fcドメインを結合させたTNFRII-Fcを発現する植物細胞。経口投与。潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患において抗TNFα抗体であるヒュミラ、レミケードなどが高い効果を持つ。しかし、これらの抗体医薬品は静脈内投与する必要があるが、OPRX-106はTNFαに作用するが経口投与可能な細胞製剤。

開発中の適応症

・Phase 2

最近のニュース:

OPRX-106の潰瘍性大腸炎P2試験の中間解析結果。24人の患者さんに1日1回投与され8週後、36%の患者さんで臨床的寛解。

コメント:

・植物細胞は常温で培養可能なので設備投資も少なくて済むのは利点。光を当て続ける必要はあるけど。

・植物細胞が経口投与可能というのは、最初意外に思ったけど通常サラダとかは生きた植物細胞を食べているわけだから安全性は高いということで納得。植物細胞をDDS的に使うというアイデアには脱帽させられた。

・炎症性腸疾患とかだから経口投与で胃腸まで分解されずに運ばれ腸に作用すればいいのだろうだけど、リウマチとかは血中に入らないといけないだろうから、OPRX-106は腸疾患以外の適応は難しいだろう。

・武田薬品はこの会社には興味ないのかな?

キーワード:

・植物細胞由来精製タンパク質

・酵素補充療法

・炎症性腸疾患

・植物細胞によるDDS

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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