top of page
検索

Torque (Cambridge, MA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第52回)ー


細胞療法を固形ガンに応用するためにT細胞の膜表面上に免疫調節分子を結合させた次世代療法の開発を目指すバイオベンチャー

ホームページ:http://www.torquetx.com/

背景とテクノロジー:

・CAR-T療法は血液がんにおいて非常に高い効果を示している(Kymriah、Yescartaなど)。一方で固形ガンに対しての治療効果は今のところ限定的と言われている(参考)。

・CAR-T療法を固形ガンに応用するためにさまざまな改良方法が検討されている。例えば山口大学発ベンチャーのノイルイミューン・バイオテック社はCAR-T細胞にIL-7とCCL19産生能を付加したPrime CAR-T細胞を開発している(参考)。

・Torque社はT細胞表面にサイトカイン、抗体、低分子などのさまざまな分子をアンカリングさせるDeep-Primingテクノロジーという技術を用いて固形ガンへのT細胞療法応用を目指している。この技術によりがん細胞を認識するT細胞だけを活性化することができるとされる。

パイプライン:

Deep IL15

患者さん由来T細胞の細胞膜表面にIL-15をアンカリングした細胞療法。IL-15はがん微小環境下において切断されてT細胞自身に作用し(自己分泌型)、がん細胞を認識するT細胞が活性化される。

開発中の適応症

・前臨床段階

血液がん、固形がん

ClinicalTrials.govには未登録(2018年中の臨床入りを予定)

Deep IL-12

患者さん由来T細胞の細胞膜表面にIL-12をアンカリングした細胞療法。IL-12はがん微小環境下において切断されて、がん細胞周辺の免疫細胞に作用し(傍分泌型)、がん細胞周辺の免疫が活性化される。

開発中の適応症

・非臨床研究段階

固形がん

Deep TLR

患者さん由来T細胞の細胞膜表面にToll-like Receptor (TLR)アゴニストをアンカリングした細胞療法。TLRアゴニストはがん微小環境下において切断されて、がん細胞周辺の免疫細胞に作用し(傍分泌型)、がん細胞周辺の免疫が活性化される。

開発中の適応症

・非臨床研究段階

固形がん

コメント:

・がん微小環境で免疫を活性化させるというストラテジー。現状CAR-TではなくT細胞を用いているが、CAR-TやTCR-T、NK細胞などにも応用可能で、そのアプローチも進めていると見られる。

・CAR-T療法が固形がんにおいて効果が限定的なのは、がん細胞内部にCAR-T細胞が集積できないからと考えられているため、TorqueのDeep PrimingテクノロジーはCAR-Tの固形がん応用への問題点を解決できる可能性を持つ。

キーワード:

・がん免疫療法

・細胞治療

・固形がん

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

最新記事

すべて表示

Arkuda Therapeutics (Cambridge, MA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第143回)ー

ライソゾーム機能の低下と神経変性疾患の関係に着目した創薬を行っているバイオベンチャー ホームページ:https://www.arkudatx.com/ 背景とテクノロジー: ・ライソゾームに局在する酵素の欠失によって起こる病気として遺伝子変異疾患であるライソゾーム病が知られ...

Audentes Therapeutics (San Francisco, CA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第142回)ー

希少疾患に対してアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療薬の開発を行っているバイオベンチャー。現在課題となっているAAVの大量製造およびヒトへの高濃度投与に関して先行している。2019年12月アステラス製薬による買収が発表された。...

bottom of page