Probodyというがん細胞にだけ特異的に作用する抗体改変技術を用いて副作用の少ない抗体治療を目指すバイオベンチャー。BMSやAbbVie、Amgen社と共同開発中。
ホームページ:http://cytomx.com/
背景とテクノロジー:
・抗体の抗原結合部位をマスキングするペプチド断片を結合させたProbodyという改変抗体の技術を持つ。このマスキングされたペプチド断片はある種のプロテアーゼによって特異的に切断され、抗体の抗原認識部位が露出される。がん微小環境では一部の細胞膜上のプロテアーゼが異常活性化されていることがあることが知られており、正常組織ではマスキングされている抗原認識部位が、このプロテアーゼによる切断で露出することでがん細胞特異的に抗体医薬品を作用させる(Probodyのイラスト)。
・抗体薬物複合体(ADC)のProbody版、Probody Drug Conjugate (PDC)の開発も行っている。
パイプライン:
・CX-072
免疫チェックポイント分子であるPD-L1(programmed cell death ligand 1)を認識するProbody
開発中の適応症
・Phase 1 / 2
固形ガン、リンパ腫
・CX-2009
CD6などと結合する細胞間接着分子CD166を認識するProbodyとチューブリン阻害物質DM4のProbody薬物複合体(PDC)。CD166はがん細胞(乳がん、前立腺がんなど)において発現が高いが、正常組織においても広く分布しておりPDCを用いてがん細胞特異的に薬物を作用させることを目指している。
開発中の適応症
・Phase 1 / 2
進行性固形ガン(乳がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、子宮がんなど)
・BMS-986249
免疫チェックポイント分子であるCTLA-4 (cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)を認識するProbody。BMSとの共同開発。
開発中の適応症
・Phase 1 / 2
進行性がん(単剤療法とNivolumab(抗PD-1抗体)との併用療法)
・CX-2029
トランスフェリン受容体であるCD71を認識するProbodyと薬物(どんな薬物かは不明)の複合体(PDC)。増殖している細胞に多く発現するCD71は、その細胞外ドメインに結合すると細胞内への取り込みが促進される。この特性をPDCによって活かす。AbbVieとの共同開発。
開発中の適応症
・前臨床段階
固形ガン、血液がん
最近のニュース:
Pfizer社はCytomX社と進めていたEGFR変異をもつガンへのPDC治療の提携を解消した。
コメント:
・(がんの細胞表面においてプロテアーゼが活性化している)×(がんの細胞表面に多く発現する抗原)というダブルチェックによる方法で副作用を軽減するというアイデアは非常に秀逸。ただプロテアーゼの活性化が起こっているガンかどうかの判別はどうするのだろうか?
キーワード:
・抗体医薬品(Probody)
・ガン
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。