核酸医薬品(アンチセンスオリゴヌクレオチド)を用いて神経変性疾患の治療に挑むシンガポールのバイオベンチャー。中枢神経系のプレシジョンメディスン確立を目指す。武田薬品と共同開発契約。
パイプライン:
・WVE-120101
・WVE-120102
変異ハンチンチン(mHTT)内の一塩基多型(SNP)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド。髄空内投与。WVE-120101はrs362307、WVE-120102はrs362331にSNPを持つ変異ハンチンチンだけを抑制することで野生型ハンチンチンの発現に影響を与えない。
開発中の適応症
・Phase 1b/ 2a
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03225833 (WVE-120101)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03225846 (WVE-120102)
・Duchenne muscular dystrophy 51
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの原因遺伝子DMDのエクソン51を読み飛ばす機能を持つアンチセンスオリゴヌクレオチド。髄空内投与。
開発中の適応症
・Phase 1
clinicaltrials.gov未登録
最近のニュース:
「ハンチントン病(HD)、筋委縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、および脊髄小脳失調症3型(SCA3)を標的としたプログラムに注力するとした。2つめの取り組みは、アルツハイマー病やパーキンソン病を含む他の神経系疾患を標的とした複数の前臨床試験プログラムについて、同社がライセンスを取得する権利を得るというもの」
コメント:
・筋萎縮性即索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症の患者さんの一部でC9orf72のイントロン部分に繰り返し配列が見られることが報告され、注目を浴びている。このc9orf72変異をターゲットとしたアンチセンスオリゴヌクレオチドが前臨床段階にあるようだ。
・アンチセンスオリゴヌクレオチドはターゲット遺伝子のmRNAに結合してその発現を抑制する(エクソンスキップする)メカニズムのため、定期的に繰り返し投与し続けないと症状を抑えることができない。最近、遺伝子変異疾患に対してウイルスベクターを用いた遺伝子治療の臨床開発が進み、成果が報告されている。特にアデノ随伴ウイルスベクターを用いた治療法は1回の投与で治療を完了できる可能性が示されており、もしこちらの治療法が確立するとアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた治療法は厳しくなるかもしれない。Voyager Therapeutics社はハンチントン病患者さんへのAAV治療の治験を進めている(参考)。
キーワード:
・核酸医薬品(アンチセンスオリゴヌクレオチド)
・神経変性疾患(ハンチントン病、ALS)
・筋ジストロフィー
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。