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Gamida Cell (Jerusalem, Israel) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第46回)ー


独自の幹細胞培養技術NAM technologyを用いて骨髄移植から代替可能な新規の臍帯血移植治療を目指すバイオベンチャー

ホームページ:https://www.gamida-cell.com/

パイプライン:

NiCord

臍帯血を独自技術のNAM technology(下記’背景とテクノロジー’の項を参照)を用いて幹細胞/前駆細胞を増やした他家細胞移植治療

開発中の適応症

・Phase 3

血液がん(急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、リンパ腫など)

CordIn

臍帯血を培養しCD34陽性の造血前駆細胞を増殖させたCordIn Cultured Fractionと、採取したそのままの臍帯血CordIn Non-cultured Fraction(成熟したリンパ性細胞、骨髄性細胞を含む)をミックスした他家細胞移植治療。βサラセミア、鎌状赤血球症はβ-globin遺伝子の異常によって起こる貧血症。

開発中の適応症

・Phase 1 / 2

・Phase 1 / 2

NAM-NK cells

HLA半一致もしくは不一致のナチュラルキラー細胞を体外でNAM technologyを用いて培養して増殖させ、患者さんに投与する他家移植細胞治療法。

開発中の適応症

・Phase 1

血液がん・(固形がん)

背景とテクノロジー:

・臍帯血には造血幹細胞、造血前駆細胞が含まれており、骨髄移植に代わる手段となりうる。

・臍帯血移植のメリット・デメリット

メリット

 出産時の臍帯から採取できるためドナーの負担がない

 完全なHLAマッチングは必要としないため、多くの患者さんに適合できる

 患者さんに移植後の拒絶反応が少ない

 世界中に臍帯血バンクがある

デメリット

 臍帯血の量、および臍帯血に含まれる造血幹細胞、造血前駆細胞の数

 は十分ではなく、移植の生着が遅れるため成功確率が低い

・Gamida Cell社はNAM technologyと呼ばれる技術を持つ。これは上記臍帯血移植のデメリットである、臍帯血に含まれる造血幹細胞、造血前駆細胞の数が少ない問題点を解決するため、臍帯血の細胞を体外で培養し高品質なCD34+の幹細胞を増殖させる技術である。ニコチンアミド(ビタミンB3)を培地中に添加するためNAM(nicotinamide) technology。ニコチンアミドは以下の2つの効果を持つとされる。

①臍帯血内の造血幹細胞・造血前駆細胞の分化を抑制することで、CD34+の造血幹細胞・造血前駆細胞が増えることを促進する

②培養中に造血幹細胞・造血前駆細胞がエピジェネティックな変化を起こすことを抑制することで、造血幹細胞・造血前駆細胞の機能が保持され、骨髄への移植細胞の移動、ニッチへの到達(ホーミングhttps://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/3264.html)、生着が促進される

・CD34は最も未分化な多能性幹細胞と全細胞系統の造血前駆細胞に発現する。

コメント:

・現状確立されている骨髄移植の問題点、特に適合ドナーが見つかりにくいという点をカバーできる代替療法として比較的スムーズに導入しやすいというメリットがある。血液がん関連はCAR-T療法が注目を浴びているが、CAR-Tと違いNiCordは他家移植となることでコストの点などで差別化できるか?

キーワード:

・細胞治療

・臍帯血培養(NAM technology)

・幹細胞

・血液がん

・鎌状赤血球症

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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