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Cynata Therapeutics (Carlton, Victoria, Australia) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第40回)ー


従来の自家・他家の間葉系幹細胞(MSC)移植治療法とは異なる第二世代のMSC治療法で治験を行うバイオベンチャー

ホームページ:http://cynata.com/

パイプライン:

CYP-001

一人のドナーから作製されたiPS細胞をmesenchymoangioblastsを経由して間葉系幹細胞(MSC)へと分化させたMSC細胞による細胞治療。従来の他家MSC移植ではドナー組織にあるMSCを抽出するが、CYP-001はiPS細胞以降を体外で増殖させてMSCを作るため、同一の起源のMSCを治療に用いることができる。

開発中の適応症

・Phase 1

ステロイド抵抗性の移植片対宿主病(GvHD)

最近のニュース:

「(富士フィルムが)Cynata社の第三者割当増資を引き受け、同社が発行する全株式の10%強を保有する見込み」「Cynata社がGvHDの患者を対象に臨床試験を予定している他家iPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた再生医療製品の開発・製造・販売ライセンス導入と製造受託の選択権を取得」「Cynata社の持つ、他家iPS細胞由来間葉系幹細胞を用いた再生医療製品開発に関する技術・ノウハウも取得可能」

コメント:

・Cymerus™ platform stem cell technologyという独自技術を持つ。これは一人のドナーから作製されたiPS細胞をmesenchymoangioblastsを経由して間葉系幹細胞(MSC)を作製する技術。他社で行われている従来の他家MSC移植ではドナー組織からMSCそのものを抽出し、移植に必要な量の細胞を確保するために体外(シャーレ内)でMSCを増殖させる。この場合、増殖過程でMSCの増殖能が落ちてきたり、多分化能が落ちてきてしまうため、一人のドナーから採れるMSCには限りがあり、事業化のためには常に新しいドナーを必要とする。一方Cynata社の技術はiPS細胞という無限増殖能を持つ細胞を経由させることで全てのロット製品を一人のドナーから作ることができる。MSCのロット間差が小さいという意味でも従来法に比べて優位性がある。

・ドナー組織から抽出したMSCの場合、どうしてもMSC以外の細胞の混入が防げないが、Cynata社の方法はiPS細胞から分化誘導して作るために均一に近いMSCが作製できるという。

・移植片対宿主病(GvHD)治療では他家MSC移植治療としてJCRファーマ(本社:兵庫県)のテムセルという製品があり、日本においてすでに承認されている。

・CYP-101は現在GvHD治療を対象に治験が行われているが、MSCが持つ免疫調節機能が効果も持つ可能性がある他の疾患への適用も考えられている。その一つが重症下肢虚血(CLI)

・日本の会社でもMSCによる治験は複数行われているが、自家移植、多数ドナーからの他家移植という従来法によるものしかない。

・iPS細胞からmesenchymoangioblastsに分化させる技術の特許を持つ(参考)。

キーワード:

・細胞治療

・iPS細胞

・間葉系幹細胞(MSC)

・GvHD

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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