スタンフォード大学の学長でGenentechの元Chief Scientific Officer、Marc Tessier-Lavigneらによって創業された神経変性疾患治療を目指すバイオベンチャー。大手製薬によって現在進められているアミロイドβ関連の治験に続く、神経変性疾患への二の矢となる創薬コンセプト。
パイプライン:
・DNL201 / DNL151
Leucine Rich-Repeat Kinase 2(LRRK2)は家族性パーキンソン病患者さんにおいて変異が報告されている遺伝子で、変異によってそのkinase活性が向上している可能性が示されている。DNL201 / DNL151はLRRK2のkinase活性を阻害する低分子化合物。血中LRRK2の酵素活性を化合物の活性をモニターするバイオマーカーとして用いて治験を行う予定。
開発中の適応症
・Phase 1
パーキンソン病
clinicaltrial.govには未登録
・DNL747
Receptor-interacting serine-threonine kinase 1 (RIPK1)はアルツハイマー病患者さんの死後脳においてリン酸化が亢進していることが報告されている。DNL747はRIPK2のkinase活性を阻害する低分子化合物。バイオマーカーは現在開発中。
開発中の適応症
・前臨床段階(IND申請済?)
アルツハイマー病、筋萎縮性即索硬化症(ALS)
最近のニュース:
DNL201はラットにおける安全性試験で懸念が示されFDAからpartial clinical holdの措置を取られた(現在は解除)。DNL747の前に健常人で治験が行われたRIPK1阻害剤DNL104は肝臓への毒性から中止になった。
コメント:
・DNK201 / DNL151の作用機序は以下のように考えられている。パーキンソン病ではLRRK2のkinase活性が向上することでリソソームにおけるタンパク質分解が機能不全を起こし、αシヌクレインを含む種々のタンパク質が蓄積し、ドパミンニューロンが細胞死を起こすという仮説がある。LRRK2阻害剤はLRRK2のkinase活性を正常化させることでリソソームの機能回復しタンパク質分解を改善させることでパーキンソン病を治療させる可能性がある。
・RIPK1はTNFαやToll-like Receptorシグナルの下流で活性化され、ミクログリアなどの炎症性細胞を駆動することで炎症反応を引き起こす。その炎症反応によりシナプスや神経細胞の減少が起こっている可能性があり、RIPK1阻害剤はミクログリアによる炎症反応を抑制することでアルツハイマー病やALSを治療できる可能性がある。
・上記の「最近のニュース」で取り上げたように、LRRK2阻害剤は過剰なLRRK2抑制によって毒性が発現する懸念があり、そのためにも血中LRRK2活性をモニターすることで、薬の投与量をコントロールする必要性がある。RIPK1阻害剤も同様の懸念がある。
・上記の2種の低分子化合物以外にも、抗αシヌクレイン抗体(パーキンソン病)、抗TREM2抗体(アルツハイマー病)、抗BACE1/tau抗体(アルツハイマー病)などが前臨床段階にある。詳細は不明。
・アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患では、タンパク質分解過程(リソソーム、オートファジーなど)の低下、脳内炎症に伴うグリア細胞の異常活性化が起こっているという仮説がある。この異常を抑制する化合物の治験が今後進行していくと予想され、Denali社の化合物はそのうちで先行しているものの一つ。
・会社名は北米大陸最高峰の山の名前デナリ(昔はマッキンリーと呼ばれた)から取られた。
キーワード:
・神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病)
・リソソーム
・神経炎症
・低分子化合物
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。