アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療が臨床において高い安全性・効果を示すデータが出てくる中、AAVによる中枢疾患治療に取り組むバイオベンチャーの中でも先行しているVoyager社に注目集まる。
パイプライン:
・VY-AADC01
VY-AADC01はCMVプロモーター下で芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(Aromatic L-amino acid decarboxylase:AADC)を発現するアデノ随伴ウイルス2(AAV2)ベクター。AADCはL-ドーパをドパミンに、5−ヒドロキシトリプトファンをセロトニンに脱炭酸化する酵素であり神経伝達物質であるドパミン、ノルエピネフリン、セロトニンの合成に必須の酵素。進行したパーキンソン病では脳の一部(被殻)においてAADCの発現量が減少しており、それを補うことでドパミン治療薬であるレボドパが脳内でドパミンに変換させる効率を上昇させる。1回投与だけでパーキンソン病の運動機能障害が改善されることを期待。外科的アプローチによる投与。
開発中の適応症
・Phase 1
進行型のパーキンソン病
・VY-SOD101
VY-SOD101はミスセンス変異により毒性発現したスーパーオキサイドディスミューターゼ(SOD1)のmRNAを抑制するmicroRNAを発現するAAVベクター。家族性の筋萎縮性即索硬化症(ALS)患者さんの20%で見られるSOD1のミスセンス変異をもつ患者さんを対象とする。髄空内への1回投与により運動ニューロンにおける変異SOD1の発現が抑制されることを期待。
開発中の適応症
・前臨床段階(2017年第4期にIND申請予定)
・VY-HTT01
VY-HTT01はハンチントン病の原因遺伝子であるHuntingtinのmRNAを抑制するmicroRNAを発現するAAVベクター。ハンチントン病は原因遺伝子Huntingtinの繰り返し配列が増加する変異によりタンパク質凝集体を形成する機能を持ち、このタンパク質凝集体が主に脳の一部(線条体)の抑制性ニューロンを障害することにより発症する運動機能障害を主症状する疾患。VY-HTT01は外科的アプローチによる投与。Sanofi-Genzymeとの共同開発進行中。
開発中の適応症
・前臨床段階
最近のニュース:
進行中のPhase 1bの中間解析において、VY-AADC01投与6ヶ月後および12ヶ月後の進行型のパーキンソン病患者さんの運動機能が用量依存的に改善された。高い忍容性も示された。
コメント:
・Science誌のこの記事の最後から2番めのパラグラフによると、CalTechが作製した、従来のAAVの40倍もの血液脳関門透過効率を持つAAVのサルによるテストをVoyager社が行っていると。
キーワード:
・遺伝子治療
・アデノ随伴ウイルス(AAV)
・神経変性疾患(パーキンソン病、ハンチントン病)
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。