Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の下流シグナルを切り分けることで副作用を減弱させつつ、主作用を保つバイアスドリガンド(ページ下部コメント欄参照)という特殊な化合物を創出するバイオベンチャー。
ホームページ:http://www.trevena.com/
パイプライン:
・OLINVO (oliceridine injection)
モルヒネの受容体であるμオピオイド受容体へのバイアスドリガンドで静脈内注射剤。μオピオイド受容体の下流シグナルのうち、Gタンパク質シグナルを活性化することでモルヒネ同様に鎮痛効果を持ちながら、βアレスチンシグナルを活性化しないことでモルヒネの副作用である便秘や呼吸抑制を起こさないとされる。
適応疾患:
・Phase 3
疼痛
・TRV734
上記のOLINVOと同じ薬理メカニズムの経口剤。
適応疾患:
・Phase 1
疼痛
・TRV250
δオピオイド受容体に対するバイアスドリガンドで経口剤。δオピオイド受容体の下流シグナルのうち、Gタンパク質シグナルを活性化することで片頭痛を抑える作用を持ちながら、βアレスチンシグナルを活性化しないことで副作用の発作誘導傾向を起こさないとされる。
適応疾患:
・Phase 1
片頭痛
最近のニュース:
術後疼痛を対象としたOliceridineのPhase 3試験2本でプライマリーエンドポイントを達成した
コメント:
・バイアスドリガンドとは ー Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は活性化されると2つの下流シグナルが流れる。一つはGタンパク質からcAMPに流れる経路で、もう一つはβアレスチンから流れる経路。GPCRの内在性リガンドや従来のアゴニストはこの両方のシグナルを活性化していた(例:モルヒネ)。それに対してバイアスドリガンドはどちらか一方のシグナルだけを流すという化合物のことである。2つの下流シグナル(Gタンパク質経路とβアレスチン経路)のどちらか一方に主作用が、もう一方に副作用が関係している時に有用な化合物。
・GPCRは薬剤ターゲットとして非常に多くの化合物が作られている。それらのうちで副作用があったために治験失敗となったものや、承認されているが副作用が強い薬は、このバイアスドリガンドのアプローチで良い薬が作れるかもしれない。
・バイアスドリガンドはドラッグデザインすることは難しいが、それに成功したという報告も出てきている(
文献)(http://www.nature.com/nature/journal/v537/n7619/abs/nature19112.html)
キーワード:
バイアスドリガンド
疼痛、片頭痛
中枢神経系疾患
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。