大環状化合物合成という新しい合成フィールドを切り開くバイオベンチャー
ホームページ:http://ensembletx.com/
パイプライン:(まだ開発化合物決定に至っていないためターゲット分子名で表記)
・Indoleamine 2,3-dioxygenase 1 (IDO-1)
免疫抑制タンパクの一つ。トリプトファン代謝酵素。マクロファージやT細胞の免疫抑制に関わる。Ensemble社では経口剤として使用可能なIDO-1の新規アロステリック阻害剤を見出している。
適応疾患:
・前臨床段階
転移性メラノーマ、肺がんなど
・Ubiquitin-Specific Protease 9x (USP9x)
ガンの生存に関わる発がんタンパク質MCL1の発現を制御する脱ユビキチン化酵素。Ensemble社では低分子の新規アロステリック阻害剤を見出している。
適応疾患:
・前臨床段階
転移性腫瘍(メラノーマ、グリオブラストーマ、トリプルネガティブ乳がんなど)
・Inhibitor of Apoptosis (IAP)
システインプロテアーゼであるCaspaseと結合することでガン細胞が死ぬのを抑制するタンパク質。多くのガンにおいてIAPの発現上昇が報告されている。Ensemble社ではIAPに結合する新規の大環状化合物を見出している。
適応疾患:
・前臨床段階
ガン領域
・Cyclophilin
プロリルイソメラーゼ活性を持つ。プロリン残基をtransからcisにする反応を触媒し、タンパク質の折りたたみ(フォールディング)を促進する。Cyclophilin AはB型肝炎ウイルスの表面抗原の産生に関わっているため、その阻害剤はB型肝炎ウイルス感染の治療に使える可能性がある。Cyclophilin Dは神経変性疾患との関与が言われている。Ensemble社ではCyclophilin AおよびCyclophilin Dを阻害する新規の大環状化合物、低分子化合物を複数見出している。
適応疾患:
・前臨床段階
B型肝炎(Cyclophilin A)
神経変性疾患(Cyclophilin D)
最近のニュース:
他社状況ではあるが、Incyte社のIDO-1阻害剤はPD-1, PD-L1抗体との併用で高い効果を示している。
先行する他社IDO-1阻害剤の課題。
コメント:
・低分子化合物は分子量がおよそ500以下の化合物群であり、現在の医薬品のほとんどである。
・低分子化合物はかなり調べつくされたと考える向きもあり、抗体、核酸などに注目が集まっている。
・それ以外に分子量500以上の中分子にも注目されており、大環状化合物にも注目が集まっている。
・中分子の問題点は経口投与での吸収が難しいことだが、大環状化合物の中には経口投与可能なものがある。
・マクロライド系抗生物質なども大環状化合物であり、天然の生理活性物質には大環状化合物が多く含まれる。
・一部ではあるが脳へ移行できる大環状化合物も存在する。
・合成の難しさが課題点。
キーワード:
大環状化合物(マクロサイクル)
ガン
神経変性疾患
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。