CRISPR技術を用いてブタ臓器をヒトに移植可能にする異種移植を目指すバイオベンチャー。
ホームページ:https://www.egenesisbio.com/
パイプライン:
現在のところ治験中のプロダクトはない
背景とテクノロジー:
・ヒトからヒトへの臓器移植は確立されているが、臓器を待つ患者さんが多い(アメリカでは7万5千人以上の人がwaiting listに)。
・ブタの臓器はヒトの臓器とサイズが近く、異種移植の中では免疫原性が弱いとされているため、ブタ臓器を使った移植が考えられている。
・しかし、ブタの染色体の中にブタ内在性レトロウイルス(porcine endogenous retrovirus: PERV)というウイルスが組み込まれている。
・このPERVがブタの臓器をヒトに移植した際に感染し、ガンを引き起こす懸念がある。
・またPERVがヒトからヒトへ感染していく懸念もある。
・eGenesis社ではCRISPR技術を用いてブタ染色体からPERVの配列62種を同定、除去を行い、PERV除去ブタを作製することに成功した(サイエンス誌2017年8月10日)
最近のニュース:
・ブタ遺伝子の一挙改変に成功、ブタ臓器を人間に移植する道が大きく開ける(Gigazine, 2015年10月16日)eGenesis社の以前の報告に関する記事
コメント:
・移植や体外灌流でブタの臓器にさらされたことのあるヒトに対する調査ではPERVの感染の事実は見つかっていないらしい(参照)。
・CRISPRについては、目的遺伝子の編集以外に、他の遺伝子領域に変異を入れる可能性が報告されており、CRISPR技術を直接ヒトに適用し、ヒトの遺伝子を編集することへの懸念が広がっている。
・eGenesis社はCRISPR技術をブタに適用しており、上記の懸念は一応ないことになる。ただ、ブタの臓器の染色体上に非特異的な遺伝子変異が入って、それが悪影響を及ぼす懸念はない訳ではない。
・62ヶ所もの遺伝子配列を編集するのはCRISPR以前の技術では難しく、CRIPSR技術を活かしたテクノロジーと言える。
キーワード:
CRISPR
臓器移植
異種移植
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。