アルツハイマー病の前駆症状である、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment; MCI)時の海馬の過剰興奮を抑制することで、神経細胞死を防ぐというコンセプトに特化したバイオベンチャー。
ホームページ:http://www.agenebio.com/
パイプライン:
・AGB101
ベルギーのUCB社が創製し、抗てんかん薬として販売されているレベチラセタム(商品名:イーケプラ)の徐放性製剤。用量は抗てんかん薬として使用されている量の12分の1。レベチラセタムのターゲット分子は前シナプスの小胞にあるSV2Aとされるが、詳しい薬物作用メカニズムは不明。過剰興奮抑制作用を持つ。
適応症:
Phase 3準備中(HOPE4MCI)
軽度認知障害(アルツハイマー病の前駆症状)
・GABA-A受容体α5ブユニットのポジティブアロステリック調整剤
GABA-A受容体にアロステリックに結合し、GABAがGABA−A受容体に結合した時の抑制性シグナルを増強する。
適応症:
非臨床研究段階
軽度認知障害、自閉症、統合失調症
最近のニュース:
実施したPhase2治験において、健忘性MCIの患者さんにAGB101を投与すると記憶力の改善が見られた。
コメント:
・メマンチンはNMDA受容体阻害剤とされ、アルツハイマー病で見られる神経細胞の過興奮を抑えることで細胞死抑制効果があるとされる。コンセプトはよく似ているが、メマンチンが中等度から重度アルツハイマー病の治療薬として承認されているのに対し、AG101はMCIをターゲット疾患としているのが違い。
・MCIの時に海馬の過剰興奮があり、その結果神経細胞死が起こってアルツハイマー病を発症するという仮説はあるが、その仮説がアルツハイマー病の原因として広く支持されているかは疑問が残る。
・アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβやタウタンパク質に着目した創薬は今のところ開発に成功しておらず、この会社のようなアミロイド仮説、タウ仮説以外のアプローチは重要であると考えられる。
・アロステリック作用を持つ化合物は偶然見つかったものが多いが(ベンゾジアゼピン、バルビツール酸など)、最近はリガンド指向性化学(LBDD)などで探す方法が開発され始めている(参考)
・GABA-A受容体α5ポジティブアロステリック調整剤のプログラムでメドケムの会社Hager Biosciencesと業務提携。
・既存薬(イーケプラ)の徐放性製剤化で物質特許(20年)が取れるのかは不明。用途特許(5年)になる?
キーワード:
アルツハイマー病
海馬の過剰興奮
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。