最近の武田薬品の動きを見ていると、国内研究所のダウンサイジングの流れが止まりません。過去に買収した海外の子会社の研究所(ミレニアムとか)をメインの研究所にしていく方針らしいです。国内の研究所はiPS研究所との共同研究と中枢神経系創薬に特化するみたいです。
思い出してみれば10年くらい前、外資系製薬会社が日本に置いた研究所を次々と閉鎖した時期がありました。ファイザー、メルク(万有)、バイエルなどなど。一方でアジアの研究拠点として、シンガポールや上海に研究所を新設しました。つまり
日本を捨てた
ということです。その後iPS研究で日本がリードしたために小規模ながら戻ってきた会社もありましたが、共同研究レベルに留まり、本格的に実験施設まで置いたりすることは今のところありません。
そして今回の武田薬品の動き。日本の製薬会社、しかも最大手の会社が研究所機能の中心を海外に移しています。これを見て将来が不安になる人も多いと思います。私も日本の創薬の将来を危惧しています。
日本の製薬会社が日本を捨てる日
なぜ武田薬品は国内研究所のダウンサイジングを進めているのでしょうか?内部のことは分かりませんが、報道などで見る限り、武田薬品の経営陣は国内研究所の生産性の低さに非常に不満を持っていることは確かのようです(こちら、この記事に関して書いた私のブログがこちら)。前のブログにも書いた通り、これって武田薬品独自の問題じゃなくて日本の多くの新薬メーカーに言える問題なんじゃないかなって思うんです。ということは、今後同じように海外に研究所機能を移す国内の製薬会社が出てくる可能性があるんじゃないかなと思います。というのも、最近どこの新薬メーカーも海外の製薬・バイオベンチャーを買収していて、海外にも研究所を持っているので、そちらと自前の国内研究所の生産性を比較した場合、国内が低いってなる可能性は結構あるんじゃないかと思うんです。つまり、外資だけじゃなくて内資製薬会社も日本の研究所を閉鎖したりダウンサイジングする可能性はまだまだあり得ると思います。
日本は世界の中で数少ない新薬が作れる国ですが、果たして10年後、その地位は保てているのでしょうか?現状の日本発の新薬開発の状況を見る限り、なかなか難しいなと思います。多分一旦日本から研究所が無くなったら戻ってくるのは相当なアピールポイントが必要で、日本で創薬研究が続けられるかどうかはちょうど今が正念場じゃないかなと個人的には思ってます。日本の現役の製薬研究員の皆さん頑張りましょう!
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