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製薬業界の未来予想図II


書くかどうか未定だと言っていた未来予想図II。書いてみました。でも前は「製薬研究職の未来予想図I」だったんですが、今回は

製薬業界の未来予想図II

です。正確にはIIになってないですが。。。今回は

「日本の新薬メーカーは多い?」

って話です。これ自体は日本人としてはとっても誇らしい話です。新薬を作れる企業がいっぱいある国だってことですから。でも合成した化合物のうちで薬として承認される確率って現在はおよそ3万分の1くらいで、2000年ごろは1万7千分の1くらいだったので、確率はこの15年くらいで約50%下がってるって言われています。成功確率が下がっているなら、承認される薬の総数を増やすためにはトライする化合物の数を増やすしかありません。ということは

臨床試験をたくさんやる必要がある=それだけの資金力がある会社が必要

になります。要はどれだけ研究開発費を捻出できるかが重要ということです。そうでなくても製薬業界は他の業界に比べて売り上げに対する研究開発費の割合が高いです。臨床試験とか開発費用が他業種よりコストがかかることが主因です。他業種と比べて研究開発費が高いのは仕方がないことですが、一つの製品を出すのにかかる研究開発費が上がってきていることが問題です。つまり承認される薬を作れる確率が下がっている以上、たくさんの化合物をトライしてみるしかなく、そのためには多額の研究開発費が必要ということです。つまり規模の論理が重要になります。ということで、日本の製薬会社はもっと合併して、海外製薬と同じくらいの研究開発費をかけられるようにならないといけないってことになっています。

だから今はたくさんある日本の新薬メーカーも減らされていく方向なのかなって推測します。フランスとか大きいのはサノフィくらいしかありませんしね。日本もそんな感じになっていくのかもしれません。これが今考えられている製薬業界の未来予想図です。

でも私は声を大にして「ちょっと待てー!」と言いたいです。企業規模が大きくなっても、トライできる臨床試験の数が多くなっても、

臨床試験する化合物がイマイチだったら成功確率は平均以下になっちゃうじゃないか

と。企業規模が大きくても臨床試験が失敗してばかりなら意味がない。僕は規模が足りないなら他社と組んで共同開発するとかで良いと思います。共同開発すれば確かに分け前は半分かもしれません。でも成功確率を下げてまで1社開発にこだわるよりも、成功確率を上げる努力をした方が良いと思います。私は成功確率を上げるのに必要なのは

技術力、サイエンス力

だと思います。今をときめくIonis Pharmaceuticalsも核酸に関する特許技術をたくさん持っています。良い技術、良い薬を生み出すサイエンスを持っている会社には自然とパートナーが集まってくると思います。がむしゃらに金かけるよりは頭を鍛えよって話です。最後は未来予想図というよりは勝手な自己主張になっちゃいましたがご了承下さい。

参考になれば幸いです。ご質問ご意見はお気軽にkenyoshida36@gmail.comまたは下のコメント欄まで。

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