製薬会社の研究職を目指す就活生の人たちは、製薬研究員ってどんな仕事をしてるのか興味があるんじゃないかと思います。イメージとしては、
創薬のシーズとなる創薬ターゲット分子を探す研究とか、構造活性相関を考えながら化合物をたくさん作るとか、ただひたすらにたくさんの化合物の毒性を評価する研究
とかでしょうか?自分が就職する前にどんなイメージだったか思い出せないので、教えて下さいm(._.)m。
でも製薬研究員のお仕事ってここ最近で変わってきているところが多いと思います。
本格的に大学との共同研究が増えました。
昔から大学との共同研究はありました。でも昔の共同研究って臨床研究をやってる研究室との共同研究が多くて、病気のメカニズムに関する臨床情報を取ってくるのが共同研究の主目的でした。そこから創薬シーズを作るところは製薬会社の役割で研究員が担っていました。
でも、大学の基礎研究が進むにつれて、大学の基礎研究から直接的に創薬シーズ(主に創薬ターゲット分子)を見つけられるようになってきました。つまり創薬シーズを見つける仕事は大学との共同研究で大学側にお願いし、
見つかってきた創薬シーズを元に薬を作るところが製薬研究員の仕事
っていう感じになってきていると思います。昔の製薬研究員から見れば、一番面白いところは大学にお願いして面倒な作業は製薬研究員って感じで面白くないなって思うかもしれません。製薬研究職に興味がある人や目指している人も、仕事にそういうイメージは持っていないかもしれません。
でも最近のサイエンスは本当に多岐に渡っていて、製薬会社1社ではフォローしきれなくなってきているのが現状です。ガンの研究だけをとっても、そのアプローチはすごく多くて、治療法も低分子、抗体、核酸、細胞治療、DDSと多い。創薬ターゲット分子を探すにしても、オミックス解析もガンの種類も多岐に渡っていて、手を広げていくとキリがありません。そして、その広がりもどんどん広がっていて、新しいアプローチが増えていきます。そこまで幅広く手を広げて投資して体力が持つ製薬会社は海外大手に限られると思います。
そういうことで、その辺の幅広いアプローチは、いろいろな大学・研究機関と手広く共同研究することでフォローするというやり方をとっている製薬会社が多いと思います。それに伴い、製薬研究員の仕事も昔とは変わってきていて、前述したように大学で見出された創薬シーズを元に社内のリソース(化合物ライブラリーとか)を使って薬を作り出すところが製薬研究員の仕事になってきています。
でもこれはまだまだ昔に近い方で、現在の製薬研究員、そしてこれからの製薬研究員は
すでに非臨床研究は終わってGLP試験する前段階もしくは臨床試験の前段階くらいのステージのものを世界中の大学やバイオベンチャーの中から見つけてくる
って感じの仕事がメインになってきているっていうイメージです。こうなってくるともう研究っていうより商社的なイメージですが、大学やバイオベンチャーの研究を理解できないと見つけてこれないので、これが製薬研究員の仕事になってきています。古い製薬研究員から見ると、がっつり研究ができなくてちょっとさみしい感じもしますが、それが現代の多角化したサイエンスをフォローしきれない製薬会社の現実の姿かなって思います。
参考になれば幸いです。ご質問ご意見はお気軽にkenyoshida36@gmail.comまで。