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薬作りは「モノづくり」から「情報戦」に変わった?


薬は昔は低分子医薬品(分子量500以下の有機化合物)が主流でした。もちろん最近作られた医薬品の中の多くは低分子医薬品ですが、最近までは低分子と天然物(と一部のタンパク製剤)くらいしか薬にはできませんでした。しかし、現在は抗体医薬品がガンとリウマチ治療薬を中心にたくさん発売され、核酸医薬品も注目されています。これらの違いって何なのか?創薬研究者の視点からまとめてみました。

(1)低分子医薬品

・有機合成によって作れるため製造コストが安価

・複数のターゲット分子に作用する薬が作れる

・経口薬が作れる

・ターゲット分子に特異的に作用する薬を作るのはなかなか大変(しかし分子標的薬を取るのが主流)

・薬になりそうな構造を持つ有機化合物の多くは、すでに特許が取られていて新規特許を取れる構造を見つけるのが大変

・巨大分子と巨大分子の結合を阻害するのが困難(タンパク質タンパク質相互作用(PPI)など)

(2)抗体医薬品

・ターゲット分子へ特異的に作用する薬が作れる

・巨大分子と巨大分子の結合阻害が可能(タンパク質タンパク質相互作用(PPI)など)

・モノクローナル抗体作製はそんなにハードルは高くない

・低分子のような特許の取りにくさはない

・投与経路は限定的(現状、経口薬の選択肢はない)

・製造コストが高い

(3)核酸医薬品

・DNAやRNAをターゲット分子とできる

・ターゲット配列に対して非常に特異性が高い

・合成技術が確立されている

・遺伝子疾患など今までの薬では治療が難しかった疾患を適応とできる

・投与経路は限定的(現状、経口薬の選択肢はない)

・主要特許が一部の企業に独占されている

このような特長があるかと思います。それぞれ一長一短ありますが、(1)から(3)のどのタイプであれ共通して言えることは

ターゲット分子に対する特異性が高い薬を作る

というのが主流になっています。薬の効果の面からも副作用の面からも、それが一番良いからです。ただ、そうなってくると、

最初にターゲット分子を見つけたところが臨床で第一選択となる薬を作れる

ということになります。当たり前のようですが、昔の薬は特異性が高くないことがあり、新規ターゲット分子への治療薬でも第一選択薬にならなかったことが多々ありました(例:シメチジン)。今はターゲット分子に対して特異性が高い薬を作る技術が一般的となり、そういうことは今後は起こりにくいでしょう。だからこそ、今後はターゲット分子をいち早く見つけることが重要です。タイトルにもあるとおり、

薬作りは「モノづくり」から「情報戦」に変わった

と言えるのではないでしょうか?いち早くターゲット分子を見つけられる研究力・情報力を持つ会社が総取りすることになっていくかもしれません。戦い方が変わってきているのですから、現場の創薬研究者も変わっていかないといけないなと思います(自戒を込めて)。

参考になれば幸いです。ご質問ご意見はお気軽にkenyoshida36@gmail.comまたは下のコメント欄まで。

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