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創薬ターゲット分子の枯渇


製薬会社に入るまでは知らなかったけど、創薬ターゲット分子って意外と限られてます。多いのは、

チャネル・受容体・酵素・トランスポーター。

しかもほとんどはその阻害剤。

最近の技術まで見てみると、抗体医薬品では細胞外の蛋白ー蛋白間相互作用の阻害もできる。核酸医薬品で遺伝子の発現を阻害することもできる。ので、その可能性は広がってきた。でも、それでもまだ選択肢は限定的だと思います。疾患の原因とかを調べてみると、細胞質内で蛋白ー蛋白相互作用している分子の異常とか、遺伝子の発現が下がっている現象が見えることがあるけど、その情報だけでは薬を作り始めることは難しい。遺伝子の発現を上げれば治療できる疾患があっても、現状の医薬品技術ではなかなか難しい。遺伝子発現を上昇させる低分子化合物を取ってくるとかは出来なくはありません。でも、目的の遺伝子だけを単独で発現制御するのを意図的に作るのって今のところ技術的に不可能だから、どうしても他の遺伝子の発現も変わる分子が取れてしまって、それでは毒性の懸念があるから臨床に持っていける確率は低い。

個人的に、近年の創薬ターゲット分子の枯渇状態はこの

技術の限界点

から来ているんじゃないかって気がします。Gタンパク質共役型受容体(GPCR)やTyrosine kinaseなど、創薬ターゲット分子として有望な、可能性があるファミリー分子は一網打尽で阻害剤が作られ、疾患との可能性が検討されつくし、もうぺんぺん草も生えていない状態です。チャネル・受容体・酵素・トランスポーター以外に注目しようにも、どう創薬したら良いのか、多くの人がノーアイデアです。

これからの創薬を考える場合、新しい創薬技術が重要だと思います。例えば

チャネル・受容体のアゴニスト、パーシャルアゴニスト、インバースアゴニストを見つける方法。

酵素・トランスポーターを活性化する方法。

特定の遺伝子発現上昇を制御する方法。

これらの方法があるだけでも可能性は相当広がります。逆に言うと、これらのどれかだけでも技術が開発されないと、創薬の未来は厳しいかもしれません。

どうしたらいいのか?じっくり考えたいと思います。面白い情報があれば教えていただけると嬉しいです。

ご質問ご意見はkenyoshida36@gmail.comまたは下のコメント欄まで。

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