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古きをたずねて新しきを知る


新しい薬を作る方法として最近の主流は「疾患治療に関与する可能性がある創薬ターゲット分子を見つけ出し、それに作用する化合物を見つける」というターゲットベース創薬と呼ばれる方法です。この場合、ターゲット分子をどうやって見るけるか?がキーとなりますが、よく用いられる方法は、疾患サンプルを用いた実験から釣ってくるという方法です。

が、それ以外の方法として

すでに効果が臨床で証明されている薬でメカニズム不明のもののメカニズムを明らかにする

という方法もあります。この方法、実はなかなか良い方法で、それはなぜかというと、

臨床で効いているという証明がある

ということです。冒頭の「疾患サンプルを用いた実験から釣ってくるという方法」ですが、疾患に関連している分子をターゲットにするという点は良いのですが、

その分子をコントロールして治療効果が得られるのか?

が不明です。「すでに効果が臨床で証明されている」というのは非常に重要なことです。例え現在はターゲット分子が不明でも、その分子をコントロールすれば治療効果が得られることが明らかなだけでなく、毒性も予測可能であるからです。

薬の歴史を振り返れば、最初はそうやって見つかってきた薬の方が多かったのです。

例えば、抗精神病薬(統合失調症治療薬)は、今はオランザピン(ジプレキサ)、リスペリドン(リスパダール)、クエチアピン(セロクエル)、アリピプラゾール(エビリファイ)などが主流ですが、これらの薬を作ることができたのは、ある薬の存在があったからです。その薬は

クロルプロマジン

と言います。このクロルプロマジンという薬は麻酔の前に投与する薬として使われていたのですが、あるお医者さんが偶然、統合失調症に有効なことに気がつきました。そこでクロルプロマジンの創薬ターゲット分子を探した結果、ドパミンD2受容体が同定されたのです。そこから統合失調症治療薬の開発は始まりました。クロルプロマジンがなければ統合失調症は未だ治療不可能な疾患だったかもしれません。

このように臨床で効果がある証明がありながら、ターゲット分子が不明な薬は魅力があります。だったらみんな寄ってたかってターゲット分子見つけ出してるはず、です。実際それで見つかったターゲット分子は他にもあります。しかし、未だにターゲット分子不明の薬があるのは、

ターゲット分子を見つけてくるのはとっても難しい

からです。現代の最先端科学を用いたとしても見つからないものはたくさんあります。これを見つけられる技術が見つかれば素晴らしいんですが、現状私はそんなに知りません。

誰か良い方法ご存知でしたら教えて下さい。

ご質問ご意見はお気軽にkenyoshida36@gmail.comまたは下記のコメント欄まで。

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