うつ病って
心の風邪
って言われるくらい、誰でもかかり得るし、かかる頻度が高めの病気です。だから、うつ病=風邪っていう例えは、的確な部分もあります。ただ、風邪って言うほど簡単には治らないし、一度病気になると再発のリスクがある大変な病気です。
最近は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と呼ばれる新薬が誕生し、副作用が少なく効果が高い抗うつ薬が増えてきましたが、これらの薬が効かない患者さんがいて、まだまだ新しい治療薬が必要とされています。
そこで、創薬を目指す私としては、
どうしたら、新しいうつ病治療薬が作れるだろうか?
と考えました。
冒頭にもあるとおり、うつ病は「心の風邪」と言われるほど、人によって「かかりやすさ」に差はあるものの、誰でもかかる可能性がある訳です。
誰しもなり得るのはなぜか?
それは人間は誰しも「自分の気にかかることを覚えておく能力」を備えているからではと思います。なぜそんなことを覚えておくのか?その理由を進化的な考え方で考えてみると、
覚えておくことで、後々に同じような状況を回避するため
だと思われます。進化というのはとてもスローに起こるので、進化的には人間は石器時代の頃からそんなに変わっていないと考えられています。石器時代の人間は、現代とは違って常に命の危険がありました。自然の中で生きているので、
・落ちると危ない場所がある
・川や海で溺れるかもしれない
・動物に襲われるかもしれない
など、命の危険がある場所はたくさんあります。それらのことを覚えておかないと生き残れません。そこで人間は恐怖の記憶をよりしっかりと覚えておくように進化しました。
また、人間は社会性の生き物であり、コミュニティーを作って、協力して狩りをしたり家事をしたりしていたと考えられています。つまり、共同生活の中にうまくフィットできるように、周りに合わせる生き方が進化的に有利でした。そのため、社会のルールもより強く覚えておくように進化しています。
このような人間の性質は現代においても引き継がれていて、人間は恐怖の記憶、コミュニティーのルールの記憶を優先的に覚えるように「デフォルトで」そうなっています。でも、現代においてはヒトのコミュニティーは石器時代に比べて圧倒的に大きくなり、気にしなければいけないことは多過ぎます。生命の危険にさらされることは減りましたが、恐怖の記憶がより強く残る能力は昔から変わっていません。
これらの人間の心の進化の結果からうつ病は生まれているのでは?と私は考えます。つまり石器時代から獲得してきた進化が、現代の生活にフィットしていない。そのためにうつ病に陥りやすくなっているのではないでしょうか。
そう考えると、うつ病を治すということは、石器時代から獲得している人間の能力を変えるということで、なかなか大変です。人間は他の動物に比べて明らかに記憶力に優れていますが、中でも恐怖の記憶は他の記憶に比べても協力です。
通常の記憶には影響を与えずに恐怖の記憶をコントロールする薬を作る。
これはなかなかの難題です。人類の進化の歴史に挑戦しているみたいなものじゃないでしょうか?(ちょっとオーバーですね(^^;)すみません)
うつ病は人間の生存能力の過剰反応
という私の考え方は、間違っているんでしょうか?もう少し考えてみたいと思います。
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