前回の「分子標的薬が主流な理由」の続きです。
前回のブログの中で「外国の大手製薬会社は分子標的薬によって分子と疾患という貴重な情報を集積している。日本の大手製薬会社も同じことをしているが明らかに差がある」というような内容の話をしました。そして「日本の製薬会社が海外大手に比べて資金的にも科学レベル的にも厳しい」というようなことも書きました。上記の内容に異論のある人は少ないのではと思います。ではどうしたらいいと思うか?いろいろ意見はあると思いますが、これは私のブログなので(^^)、私の考えを言いたいと思います。
前回の記事にも書いたとおり、分子標的薬は科学的に論理的に創薬できる非常に良い方法です。だからこそ外国の大手製薬会社が多額の資金を投入して研究開発しています。でも日本の製薬会社(一部除く?)が同じことをしても、すでにかなり先行している会社にかなわないのではと思います。じゃあどうするか?
私のアイデアとしてはやはり
複数のターゲットに作用する薬を作る
というのがいいと思っています。なぜか?
今、分子標的薬がたくさん出てきている中でも、古いけどオンリーワンな薬が重宝されているケースがあります。例えば、統合失調症治療薬のクロザピン。無顆粒球症という非常に重篤な副作用が起こる可能性があるためなかなか使われない薬なのですが、難治性の統合失調症(現存の薬で効くものがない)に対して有効であることから、専門の精神科医の先生方に使われています。
そして面白いところは、このクロザピンはすごく良い薬なので、副作用のない改変型クロザピンとしてオランザピンという薬がイーライリリーによって作られました。クロザピンとオランザピンは化学構造もそっくりでメインの標的分子もどちらもドパミンD2受容体です。ですが、オランザピンでは無顆粒球症という副作用は出ません。その結果、オランザピンは統合失調症治療のスタンダード薬になるくらいまで市場に受け入れられました。しかーし、
やはり難治性の統合失調症に効くのはクロザピンだけ
だったんです。薬の化学構造もそっくり、メインの標的分子も同じなのに。つまり、よく分からないけどクロザピンだけが作用できる未知の標的分子が存在しているんです。私が考える分子標的薬以外の薬とはこういう薬です。
実際のところ今の規制当局のクライテリアだと、このクロザピンは副作用が強すぎて承認されない可能性があるとは思います。ですので、これほどの副作用は問題ですが私が考えるに、クロザピンのような
分子標的薬にはできない、オンリーワンの薬を目指す
のが、良い戦略なのではと考えます。じゃあどうやって?ということについては、いろいろアイデアはありますが、もう少し考えさせてください。
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