薬を作る工程の途中では科学では未解明なところもたくさんあります。例えば
・化合物Aはなぜ毒性が出るのか?
・化合物Bはなぜ代謝安定性が悪いのか?
・化合物Cはなぜ物性がよくないのか?
・化合物Dはなぜ非競合阻害なのか?競合阻害なのか?
上記の項目それぞれについて、それをどう改善・回避できるのか?も科学的に分からない場合が多いです。そういう場合に論文などを調べれば科学的に結論がつけられる場合もあるでしょうが、現代の科学では原因究明できない場合も多いです。そういう場合どうするかというと、
ただひたすらに類縁化合物を作って実験し、傾向を見出す
という方向か
偶然に改善できる化合物が出るまでやる
という方向に行くかになります。
いずれにせよ、
よく分からないけど、がりがり実験するしかない
ということになります。
製薬業界への就職を希望される人はその辺りも把握しておいた方がいいです。例えば面接で
「論理的に理解できないような実験結果が出た時あなたはどうしますか?」
「ただひたすらに同じ実験を繰り返すのは嫌いですか?」
「方向性が見えない状況でも手を動かすことができますか?」
というような質問を受けるかもしれません。そういう時にどう対応するかを考えておいた方が良いでしょう。自分から
・たくさんデータを出せるタイプである(実際出したデータ量が多い)
・傾向をつかむためにただひたすらに実験を繰り返した経験がある
・我慢強い
・論理的ではあるが、非論理的な状況での対応法も知っており、対応できる
などの点をアピールできると良いケースもあると思います。
製薬業界で研究職を目指す人は知っておいて欲しいなと思うのですが、大学は論理性を追求する場所、自然の中から何らかの法則を見つけ出す場所ですが、製薬企業は
病気を治す薬を見つけ、販売する場所
であるということです。科学的かどうかは二の次です。もちろん、科学的にやった方がスピーディーに薬を生み出せる確率は上がります。科学的に論理的にできれば一番です。でも
科学的には未解明でも薬を作らなければいけない
ということも知っておいていただければなと思います。
参考になれば幸いです。ご質問はお気軽にkenyoshida36@gmail.comまで。