2018年3月31日3 分

Generation Bio (Cambridge, MA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第54回)

アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスやその他のウイルスベクターの臨床応用が進む中、独自の非ウイルス性のベクターによる遺伝子治療を目指すバイオベンチャー。

ホームページ:https://generationbio.com/

背景とテクノロジー:

・closed-ended DNA (ceDNA) Technologyは細胞質内に取り込まれ核内に移行することができるDNA。核内に入ると安定的に遺伝子発現するが、染色体には挿入されない。ウイルスは中に入れられるDNAの長さに制限があるが(AAVだと3-4kb)、本技術にはもっと大きなサイズのDNAを送達できる。また現在のウイルスによる遺伝子治療は一回投与だが、この技術では繰り返し投与が可能であり、従来の医薬品のように低用量から始めて、効果に応じて用量を上げていくことが可能。肝臓、眼、脳、筋肉において長期の発現を確認している。

・GeneWaveは全身投与によってceDNAを肝臓に届けることができる脂質ナノ粒子(LNP)。遺伝子を肝臓内の細胞に導入してタンパク質を発現させ、そのタンパク質を全身に行き渡らせて作用させるバイオファクトリーとしての用途も検討されている。

・上記ceDNA TechnologyとGeneWaveを組み合わせることで、ウイルスベクターではない遺伝子治療ができ、ウイルスベクターよりも免疫反応などのリスクが低い治療が可能になるとしている。

パイプライン(全て非臨床段階):

希少疾患の肝臓疾患

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症

フェニルケトン尿症

糖原病1a型

オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症

脂質ナノ粒子が肝臓に指向性があるため、肝臓の機能に影響がでる遺伝子欠損の疾患に対して、それぞれの疾患の欠損した遺伝子を発現させる遺伝子治療。

タンパク質欠損を伴う希少遺伝子変異疾患

ライソゾーム病、血友病などタンパク質を補充することで治療効果がみられる疾患

GeneWaveは肝臓の細胞に遺伝子導入できる技術で、肝臓の細胞に分泌タンパク質を発現させ、血中にのせて全身に作用させることができる。タンパク質を血中に補充することで治療できる疾患への適応を考えている(例えば、血友病Aなら血液凝固第VIII因子、ハンター病(ライソゾーム病の一つ)ならイズロン酸-2-スルファターゼ)を発現するベクター)。

遺伝性眼疾患

ceDNA+GeneWave技術を用いて硝子体内投与(眼内投与)することでin vivoで網膜の全ての層に長期的に発現させられる。遺伝子サイズが大きすぎてウイルスで発現させられないような原因遺伝子の眼疾患に対する治療を試みる。

嚢胞性線維症

cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)の変異によっておこる肺疾患である嚢胞性線維症に対する遺伝子治療。230k baseものサイズの遺伝子のため通常のウイルスには入らないが、ceDNA Technologyであれば可能。

中枢神経系疾患

ceDNA+GeneWaveを用いてin vivoの中枢神経系において長期的に発現させられることを確認している。適応疾患などは未公表。

最近のニュース:

Atlas-backed Generation Bio promises ‘druglike’ gene therapy(2018年1月8日)

希少疾患の肝臓疾患およびタンパク質欠損を伴う希少遺伝子変異疾患は2019年前半の臨床入りを目指している。

コメント:

・脂質ナノ粒子(LNP)は全身投与すると肝臓に指向性がある。このために肝臓疾患の適応を考えているが、他社の多くのLNPも肝臓に指向性がある場合が多く、他の臓器に指向性がある技術はなかなか難しいようだ。Generation Bio社では肺、網膜、中枢神経系、筋肉に指向性を持つLNP開発を目指しているとのこと。

・AAVベクターは安全と言われているが、サルとブタで毒性が出たとの報告もある(参考)。非ウイルス性のベクターは毒性、免疫原性のリスクは低い可能性がある。

キーワード:

・遺伝子治療(非ウイルス)

・希少疾患

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

#ベンチャー調査 #製薬 #研究

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