2018年1月14日2 分

Tocagen (San Diego, CA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第37回)ー

ウイルスベクターによる遺伝子治療とプロドラッグを組み合わせたがん治療法で初の承認獲得を目指すバイオベンチャー

ホームページ:https://tocagen.com/

パイプライン:

Toca 511 & Toca FC

シトシンデアミナーゼ遺伝子を挿入された増殖性レトロウイルスベクター(製品名:Toca 511)と、5-フルシトシン(5-FC、製品名:Toca FC)という人体に無毒の物質を投与し、シトシンデアミナーゼを発現する細胞だけで5-FCが5-フルオロウラシル(5-FU)に変換されてガン細胞の増殖を抑制する治療法。Toca 511はがん切除後の空洞に注入する。原理の動画はこちら(日本語字幕あり)

開発中の適応症

・Phase 2/3

再発性のグリオブラストーマ

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02414165

・Phase 1

転移性固形ガン

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02576665

初発のグリオーマ

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02598011

最近のニュース:

Tocagen Adopts “Seamless Pivotal Trial” for Brain Cancer Therapy(2017年10月27日)

Toca 511&Toca FCのPhase1の途中結果の学会報告。ステージ後期のグリオーマの平均生存期間は7から9ヶ月だが、Toca 511&Toca FCを投与された23人の患者さんのうち、5人の患者さんでは36ヶ月後も生存していた。

コメント:

・5-フルオロウラシルは古くからあるDNA合成阻害作用をもつ抗癌剤だが副作用が強い。いくつかのプロドラッグも発売されているが、このToca 511&Toca FCはそのハイグレード版プロドラッグと言える。

・コンセプト的には脳腫瘍以外のガンでも適応可能。薬物抗体複合体(ADC)は抗体が脳血液関門を通過できないため原則的には脳腫瘍は適応が難しい。しかしToca 511&Toca FCはレトロウイルスが脳血液関門を通過できるため、選択的に脳内のがん細胞を狙い撃つことができる。ADCなどとの差別化を考え、脳腫瘍を最初の適応疾患として開発を進めているのではと考えられる。

・他社の治験等でよく用いられている非増殖性のウイルスベクターと違い、このウイルスベクターはがん細胞内でウイルスが増殖し、放出され、近傍のがん細胞に感染させる増殖性を持つウイルスベクター。1回の投与で大きな効果が期待できる反面、そのコントロールが重要。

・Toca 511&Toca FCはシトシンデアミナーゼ遺伝子を発現するベクターを利用しているが、siRNAや抗体などを発現させることもできるため、いろいろな応用が期待される。

キーワード:

・遺伝子治療

・レトロウイルス

・プロドラッグ

・脳腫瘍

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

#ベンチャー調査 #製薬 #研究

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