2018年1月7日3 分

Seres Therapeutics (Cambridge, MA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第36回)ー

カプセル化した細菌(芽胞)の経口投与で腸内細菌叢を正常化する治療薬創製を目指すバイオベンチャー。腸内細菌の治療薬創製では世界でトップランナー。

ホームページ:http://www.sereshealth.com/

パイプライン:

SER-109

再発性のクロストリジウム-ディフィシル感染症(CDI)患者さんの腸内は抗生物質投与の影響から腸内細菌叢が乱れてしまっており、CDIを再発しやすい。SER-109は、健常人ドナーの便中の細菌の芽胞をカプセル化した薬剤(経口投与)。CDI患者さんの腸内細菌叢を正常化させることで再発予防を目指す。

開発中の適応症

・Phase 3

クロストリジウム-ディフィシル感染症(CDI)

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02437487 (Phase 2)

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03183128 (Phase 3)

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03183141 (Phase 3)

SER-287

潰瘍性大腸炎患者さんは腸内細菌叢が乱れているという仮説から、健常人ドナーの便中の細菌の芽胞をカプセル化した経口剤SER-287によって腸内細菌叢を正常化する薬剤。

開発中の適応症

・Phase 1b

潰瘍性大腸炎

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02618187

SER-262

Seres社の技術であるEcobioticsによって作られた薬剤。クロストリジウム-ディフィシル感染症患者さんでバランスが崩れている腸内細菌叢を、不足している細菌を補充することで調節する。

開発中の適応症

・Phase 1

クロストリジウム-ディフィシル感染症(CDI)

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02830542

最近のニュース:

間もなく「腸内バクテリアがあなたの病を治す」時代が到来する(Gigazine)(2016年7月1日)

CDI microbiome drug trial failure may be explained by misdiagnosis, dosing(2017年2月1日)SER-109のPhase2結果がネガティブだったのは組入れ条件としていたPCRによる診断のミスだった可能性。

Seres Therapeutics Reports Positive Topline Results from SER-287 Phase 1b Study in Patients with Ulcerative Colitis(2017年10月2日)

Seres Therapeutics Announces Strategic Collaboration with Nestlé Health Science for Microbiome-BasedClostridium Difficile and Inflammatory Bowel Disease Therapies in Markets Outside of North America(2016年1月11日)SER-109など広範な開発品についてNestle Health Scienceと共同開発契約

コメント:

・先行しているSER-109、SER-287は健常人ドナーの糞便から抽出した細菌を芽胞化させたもの。芽胞化させることで滅菌処理が可能になっている。しかし、芽胞形成しない有用な腸内細菌もいるだろうがそういう細菌が不足している疾患にはこの方法は難しいのだろうか。

・疾患によって悪化した腸内細菌叢のバランスを、体外で増やした細菌を投与することで調節するEcobioticsという技術をもつ。健常人ドナーを必要としないため、安定的な結果が期待される。この技術で作られているのが現在Phase1にあるクロストリジウム-ディフィシル感染症 を適応としたSER-262。それ以外にもこの技術を用いてSER-301(炎症性腸疾患)、SER-401(ガン免疫)、SER-155(移植に伴うGVHD)などが前臨床段階にある。

キーワード:

・腸内細菌叢

・クロストリジウム-ディフィシル感染症

・炎症性腸疾患

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

#ベンチャー調査 #製薬 #研究

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