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日本から研究開発型のグローバルファーマは生まれるのか?


このところブログがベンチャー探索ばかりになっていたのですが、久々に製薬業界について書いてみたいと思います。前にも書きましたが、製薬会社の理想は、自社で研究して自社で開発して承認を取り、自社で販売する

「自社創製・自社開発・自社販売」

です。しかも「自社開発・自社販売」についてはグローバルに出来るのが一番です(これが出来る製薬会社を「研究開発型グローバルファーマ」と呼びます)。世界売上ランキング上位に入る大手製薬会社はみんなこれを目指しています(海外・国内とも大手はすでにグローバルに自社開発・自社販売する態勢を整えています)。しかーし、現実はそう甘くない。。。。この理想に近づけている大手製薬はそう多くありません。

問題は「自社創製」。

これが難しい。自社開発・自社販売態勢を整えているということは、グローバルに多くの従業員を抱えているということなので、それなりに売れる薬をそれなりの数、自社研究所で作らないといけない。多くの会社の悩みのタネです。こうして、グローバル開発、グローバル販売網ができている会社には大きく3つの選択肢しかなくなります。

1.頑張って自社研究から薬を出す

2.他社創製品を導入(共同開発)する

3.魅力的な製品/開発品を持つ他社を買収する

多くの大手製薬会社はこの3つを全部選択して何とかやりくりしています。

ここからが本題ですが、最近になって、一部の製薬会社は

1の「自社研究から薬を出す」をかなり諦めている!

と思います。2と3、

導入と買収に注力する、いわゆる「製薬商社化」

してきています。自社の研究所に見切りをつけてるってことですね。曲がりなりにも大手製薬である以上、研究所をなくすことはないとは思いますが、基本的には導入や買収がメインということです。これはこれで仕方がないのかもしれません。自社の研究所はどう頑張っても数多ある新しい研究全てに手を出すことはできません。バイオベンチャーは星の数ほど生まれ、消えていきますが、小さくても独自の新しい研究成果や技術を持っていますから、生き残ったバイオベンチャーは大手製薬より魅力的なプロダクトを持っていることが多いです。これはどんなに大きな製薬会社でも直面する課題です。そんな中でも「共同研究」や「自社研究員の努力」で何とか最先端を走っている製薬研究所もありますが、多くはベンチャーに負けているというのが現状でしょう。で、結局多くの大手製薬は何となく製薬商社化していっています。

自社研究を諦め製薬商社化していっているグローバルファーマの姿。これって海外だけの話じゃないんです。国内でもそっち方向に舵を切っている大手製薬があるなーって思います。あの日本の大手製薬会社でさえそうなっちゃっている以上、

果たして日本に自社創製・自社開発・自社販売する「研究開発型グローバルファーマ」って生まれるんでしょうか?

って思います。そして、遅ればせながらグローバルに勝負していく、これから自社開発・自社販売態勢を拡大していく国内製薬会社もあります。果たしてグローバルで勝負できる自社創製品を作り続けられるんでしょうか?

日本から研究開発型のグローバルファーマは生まれるのか?

世界的に見ても難しいことに挑戦していく日本の製薬会社を影ながら応援していきたいと思います!

参考になれば幸いです。ご質問ご意見はお気軽にkenyoshida36@gmail.comまで。

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