度々書いてますが、経済財政諮問会議で薬価算定の方法について様々な提言が行われ、薬価算定方法が変えられようとしています。画期的新薬が創出されるのを促す制度を作るとか言っていますが、日本の場合、まず健康保険制度の維持のためが第一というのが明らかに透けて見えるので、制度もそれを一番に考えた薬価制度になり、画期的新薬創出を評価すると言うような建前は二の次だろうなと思います。ですが、世界的に見ても、薬価に対する視線は厳しくなっていて、何でもかんでも新しい薬を作れば高い薬価をつけてもらえる時代ではなくなってきています。
アメリカでは薬価は保険支払い会社と製薬会社の交渉によって決まっていて、日本やヨーロッパのように国が薬価を決めている訳ではありません。しかしながら、そもそも保険支払い会社が使用可能な薬のリストに載せてくれない限り、医者も患者も薬として使うことができません。そして、保険支払い会社は
「この疾患にはこれしかないという薬」や「明らかにメリットが大きい薬(価格や効力)」
しか使用可能リストに載せない方針になりつつあります。ですので、アメリカにおいても薬価は引き下げられる方向に動いています。
世界的にそんな状況の中、これからの新薬に求められることは何か?はっきり言えば
安くて効く薬作って!
ていう話です。でもそれじゃあ高い研究開発費をかけてまで新薬を作る動機はなくなってしまいます。でもこれだけ多くの疾患に対して薬が生み出された今、求められる新薬とは
全体の医療費・介護費を抑えてくれる薬
だと思います。例えば画期的なアルツハイマー病治療薬ができ、認知症の進行が10年遅らせられたとします(根治とかの夢物語はちょっと置いておいて)。この医療費・介護費全体への影響は計り知れません。この薬に高い薬価を払っても全体として抑制できるからメリットは大きいなって、アメリカの保険支払い会社も日本やヨーロッパの行政当局も考えます。一方で、例えばそれなりに良い薬がある糖尿病治療薬で、さらに効力がちょっとだけ上がった新薬(すでにかなり効果があるので劇的に効くのは難しい(天井効果))を作ったとします。これに高い薬価をつけるメリットはありません。アメリカの保険支払い会社ならリストにも載せてくれないかもしれません。
効く薬作ればどんな薬でも新薬扱いしてもらえた、あの輝かしい時代は終わった
ということでしょうね。製薬業界は厳しいですね―。参考になれば幸いです。ご質問ご意見はお気軽にkenyoshida36@gmail.comまで。