少し前のブログにも書きましたが、新薬を作るハードルが昔より明らかに上がってきています。当局からなかなか承認されないっていうだけではなく、薬価がつかない。これまでの制度では、新薬は特許切れるまでは新薬加算とかついたりして優遇されてました。もちろん、ピカピカの新薬(ピカ新(死語))であれば今でも同じですが、ゾロ新(これも死語)と呼ばれた、「特許は取れてるけど先行薬があって、効くメカニズムはそれと同じだよーって薬」も新薬扱いしてもらえてたんですが、そんなもん新薬扱いなんかできるかーって感じになってきているのが昨今のせちがらい世の中、いえいえ正しい世の中になってきているんです。
なんのことかよく分からない方もいると思うので以降解説です。まず、
ピカピカの新薬とかゾロ新って何?
って話ですね。製薬業界以外の人は知らないと思いますが、新薬と言っても大きく分けて2つあります。一つが
今まで治療薬がなかった疾患(症状)を治療できる新薬(①)
と
①をまねして作った新薬(②)
です。普通②は新薬なの?って思うかもしれませんが、②でも物質特許が取れればそれは新しい薬として認められたということになります。つまり①の薬を開発している途中に、とっても効きそうだ!とニュースになったり、そもそも①の物質特許が公開になった時に、これは有望そうだ!と他社が思ったら、「同じ薬理作用を持つけど、薬の構造は違う化合物」を作って新規特許を取ってしまうというのが②の戦略です(これを特許抜けと呼びます)。
そして①はピカ新、②はゾロ新と、かつて呼ばれていました。
世界売上げランキング上位に入るような有名な製薬企業もこの②の戦略で新薬を作りまくりました。②でも新薬扱いを受け、高い薬価で売ることで製薬会社がボロ儲けしていたからです。①が作り出す市場は巨大なので2匹目のどじょうでも十分儲かったのです。ただ、この②の戦略で暴利をむさぼる製薬会社は卑怯だ!という批判は90年代くらいからNature誌上などでも議論されていました。
そんな状況の中、オブジーボなどの薬価の高いバイオ医薬品が登場すると、どの国も医療費高騰に苦しむようになりました。そして薬代を抑えるため、②の戦略がターゲットになりました。というのが冒頭の話です。
②の戦略なんかやってる製薬会社が悪いんじゃねーか!というご批判はごもっともです。だから正しい方向に向かっていると思います。しかし、一点いうと、「同じ薬理作用」でも全く同じ薬にはならないことが多いです。薬の効き方には個人差がありますので、同じ薬理作用の薬の中にも、患者さんAにあう薬、患者さんBにあう薬が違ったりすることがあります。そういう意味で②の戦略も一概にダメとは言い切れない部分はあるんです。
いくら②といってもジェネリック医薬品とは違って、新薬としての要件は求められるため、開発費は①と同じくらいかかります。だから既存薬と同じ薬価にされると製薬会社は②を開発しなくなります。そうすると①の薬が合わない患者さんが困ることになります。そこでプレシジョンメディスン、、、となる訳ですが、話が長くなるので今日はこの辺で。
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