最近、どこの国内企業も、採用者に対して英語力を求めています。グローバル化が進む中で、英語が必須の状況がどんどん増えてきているということだと思います。
国内の製薬企業、特に新薬メーカーの場合、英語への重要度は急速に高まっています。業界一位の武田薬品は新卒採用に関して、5年以上前からTOEICスコア730点以上を求めています。他の新薬メーカーもおおっぴらには言わないものの、同様のクライテリアを設けていると考えておくべきでしょう。ではなぜそんなに英語が必須なのか?その理由は
日本の医薬品市場が急速に収縮しているから
です。政府は医療費削減のためにジェネリック医薬品の使用を促進しています。これにより新薬メーカーは薬の物質特許(通常20年)が切れると一気に売上が減ることになります。アメリカなどは昔からこの傾向は著しく、特許切れ翌月から売上が90%以上減るのが普通だったのですが、日本では先発品信仰があり、なかなかジェネリック医薬品の普及が進んでいませんでした。しかし、超高齢化による医療費高騰の影響から、日本の健康保険行政はジェネリック医薬品に頼らないと立ちゆかなくなっています。また、新薬の承認に関し、必要とされる臨床試験やデータは昔に比べ、質・量ともに拡大し、新薬開発コストは増える一方です。このような状況の中、国内新薬メーカーは、増えた開発費を取り戻すために、世界最大の医薬品市場であるアメリカで開発費をペイしようとしています。このような状況から新薬の主戦場はアメリカであり、アメリカで自社開発もしくは共同開発を進めています。国内メーカーと言えど英語は必須です。
もうひとつ、最近の国内製薬企業は大型新薬の特許切れ問題に瀕しており、その対策として国内外のベンチャー企業の買収を進めています。武田のミレニアム・ナイコメッド、エーザイのMGIファーマ、大塚のアバニアなど、今まで貯めてきた内部留保金のかなりを使って、相当な賭けに出ています。そんな中で各社とも
海外子会社が増えてきており、そのコミュニケーションのために英語力がいる
というのが現状です。
これらの観点から、国内製薬企業は英語力のある人材確保が急務であり、新卒・キャリアの採用者に英語力のある人を求めているのです。
参考になれば幸いです。ご質問はお気軽にkenyoshida36@gmail.comまで。
補足:
なぜアメリカの医薬品市場は世界一大きいのか? それは、アメリカは3億人の巨大市場というのもありますが、国策として新薬で儲かる仕組みを作ることで製薬業界を成長産業として振興し、グローバルに勝てる製薬企業を育成してきたからだと言われています。しかし、近年は日本と同様に医療費高騰に悩まされていて、状況は変わりつつあります。