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Tychan (Singapore, Singapore) ーケンのバイオベンチャー探索(第180回)ー

  • 2020年8月30日
  • 読了時間: 4分

更新日:2020年12月31日


複雑な工程で製造される抗体医薬品のプロセスを最適化することで短期間での抗体製造を可能とする独自技術を持ち、このスピード感を武器に新型コロナウイルスSARS-CoV-2のモノクローナル抗体治療薬の開発で世界で先行しているバイオベンチャー


ホームページ:https://www.tychan.com/


背景とテクノロジー:

・新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックが進んでいく中で、ソーシャルディスタンス、マスク着用、衛生管理(手指消毒)、都市封鎖などの手法が取られているが、どれも根本的解決するには至っていない。


・アメリカを中心として、COVID-19の解決法として科学によるアプローチが試みられている。現状、FDAが承認している治療薬はGilead Sciencesの抗ウイルス薬レムデシビル(ベクルリー®)と、免疫抑制剤デキサメタゾンのみで、これらについては他の治療薬からのドラッグリパーパシングであり、新型コロナウイルスSARS-CoV-2を対象として作られた薬ではないため、効果は限定的である。そこで新型コロナウイルスSARS-CoV-2を対象とした創薬開発が進行中である。


・新型コロナウイルスSARS-CoV-2は30 kbという巨大なゲノムを持つRNAウイルスだが、生体に感染すると、巨大なたんぱく質を作り、それを3CLプロテアーゼで処理することで、ウイルス増殖に必要なたんぱく質を作り出す。この3CLプロテアーゼを特異的に阻害する治療薬は動物実験においてMERSなどのコロナウイルスの増殖を抑制することが報告されている。3CLプロテアーゼ阻害薬が新型コロナウイルスSARS-CoV-2にも効果を持つ可能性があり、開発が進められている(参考)。


・アメリカのバイオベンチャーVir Biotechnologyは、SARS-CoV-2のスパイクたんぱく質を認識する中和モノクローナル抗体VIR-7831、VIR-7832の開発を行っており、現在Phase II治験を行っている。この中和モノクローナル抗体は新型コロナウイルス感染症COVID-19から回復した人から単離した抗体の配列を基に作られており、臨床の情報をベースとしているため効果を示すことが期待されている。


・今回紹介するTychanも新型コロナウイルスSARS-CoV-2へのモノクローナル抗体治療薬の開発を行っているシンガポールのバイオベンチャーであり、感染症に特化した抗体医薬品を開発している。


・このバイオベンチャーの特徴は生物製剤の製造過程の最適化にある。詳細はホームページでは開示されていないが、データ分析、バイオ製造プロセス、レギュラトリーサイエンスの革新的な技術を統合し、候補となる生物製剤をより早くヒト臨床試験に結びつけることを可能にするプラットフォームを保有しているとのこと。この最適化プラットフォームを用いることで、同社の開発品2つについて、開発候補品選定後からIND申請までを10ヶ月以内に完了させている。


パイプライン:

Tyzivumab

ウイルス表面のエンベロープタンパク質の4級エピトープに特異的に結合することで、ジカウイルスを中和するように設計されたファーストインクラスのモノクローナル抗体。

開発中の適応症

・Phase II

ジカ熱


TY014

黄熱病ウイルス表面に存在するエンベロープタンパク質の特定のエピトープに結合することにより、黄熱病ウイルスの複数株を中和するように設計されたファーストインクラスのモノクローナル抗体。

開発中の適応症

・Phase II

黄熱病


TY027

新型コロナウイルスSARS-CoV-2を中和するために設計されたモノクローナル抗体。

開発中の適応症

・Phase I

新型コロナウイルス感染症COVID-19


コメント:

・上記「背景とテクノロジー」欄にも記載したように、新型コロナウイルスSARS-CoV-2に対する治療薬の開発も進められているが、多くはドラッグリパーパシングやドラッグリポジショニングであり、新薬で治験に入っている治療薬はまだ数が少ない。モノクローナル抗体ではVir BiotechnologyのVIR-7831、VIR-7832がPhase IIに、Eli LillyとAbCelleraのLY-CoV555がPhase IIIに、Eli LillyとJunshi BiosciencesのJS016がPhase Iに、AstraZenecaのAZD1061とAZD8895がPhase Iをそれぞれ開発中である。Tychanは注目されるような新規技術は保有していないようだが、これらの会社と遜色ないスピードで新型コロナウイルス感染症COVID-19の治療薬開発を進めている。


・抗体医薬品に限らず、ワクチンや遺伝子治療製品など生物製剤は、創薬のステージのみならず、製造技術のステージの技術開発も非常に重要であることを示す好例なのではないか。特に感染症領域は、アウトブレイクから遅れることなく治療薬を提供することが求められており、Tychanは感染症に特化したバイオベンチャーとしてその方向に指向していると言える。


キーワード:

・抗体医薬品

・製造プロセス最適化

・感染症

・新型コロナウイルス感染症COVID-19


免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても筆者は責任をとれません。よろしくお願いします。

 
 
 

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